社会

「高校授業料無償化」を批判する新聞業界が語らない「入試システムの闇」

 2024年度から東京、大阪に在住する高校生が、公立私立を問わず「授業料無償化」。これについては東京新聞から産経新聞まで、新聞業界全体で「高校無償化は悪」と頭ごなしに決めつける報道が先行している感がある。高齢の新聞購読者を意識しているからなのか、肝心の高校生の視点が欠けているのだ。

 そもそも「無償化反対」と騒いでいる中高年世代も新聞記者も、今の高校入試制度の「闇」を全く知らないのだろう。

 昔の高校入試は都立高校や府立高校の「最下層」にも入れない学業不振、素行不良の中学生が、私立高校の「単願推薦」で救済されていた。

 ところが今の私立推薦入試では「全教科の中に相対評価で2がある生徒は推薦応募不可」という条件をつけている学校が非常に多い。

 高校野球に代表されるように、高校の推薦入試制度は「一芸に秀でた生徒に有利な推薦制度」だったはずが、国語から数学、体育、技術までオールラウンドにこなせる生徒が圧倒的に有利な入試制度になってしまった。

 しかも中学の5段階評定は絶対評価ではなく、相対評価。全体的に成績が悪い生徒のみならず、音楽や美術、運動など一部の実技系教科が苦手な、成績にバラつきがある生徒も含めると、学年の過半数の生徒がこの時点でドロップアウト。裁縫やスポーツが苦手なだけで「中学生で人生終了」しているのだ。

 近年、通信制や単位制の高校が台頭してきているのは、こういう生徒たちの受け皿になっているからである。

 公立高校はさらに露骨で、都立高校受験のベースになる内申点は中学3年生時点の「主要5教科 5段階評定+実技4教科 5段階評定を2倍掛け」という、実技重視の評価に変わってしまった。

 なので昔の日比谷高校や戸山高校、西高校、竹早高校といった都立の名門校は「理数系が得意な秀才が進学」するイメージだったが、今は「スポーツが得意な陽キャが進学」する高校に変貌してしまったのである。

 東大合格者ランキングで私立が上位にランクインするのも、日比谷や西のレベルが落ちたから、とは一概には言えず、算数はできるけど運動は苦手という、バラつきがある子供が小学校の時点で都立名門校受験を諦め、中学受験に逃げてしまっているからだ。

 主要3科目は得意なのに実技系が苦手な子供は内申点を稼げず、ランクを落として都立高校を受験するか、3科目受験の私立一般入試を受けるしかない。

 このため、都立高校受験には近年、異変が起きている。

 今年度の都立入試では、都立戸山より少し内申点が足りない受験生が、都立新宿高校に集中。新宿駅と新宿御苑の間に位置する通いやすい環境ということもあり、新宿高校の今年度入試の競争率は都立最高の2.12倍になった。

 他にも理系教育に特化した都立豊島高校が2.07倍、英語教育に特化した都立本所高校が1.94倍と、東京都の「オールラウンダーを育てる」という時代に逆行した教育方針とは真逆の、生徒の個性と得意分野を伸ばす都立高校に人気が集中している。

 都立高校で競争率が2倍近いというのは、かなり壮絶だ。今どきの高校受験と受験生は、昔と比べて過酷なのである。小池百合子都知事や吉村洋文府知事が都立高校、府立高校の改革をしないことが問題なのに、「小池都知事と吉村府知事が高校無償化したせいで私立に流れて、都立や府立が定員割れしている」という新聞業界の言い分が、いかにトンチンカンなのかわかるだろう。

 少子化を嘆く一方で「一部教科が苦手な生徒は入学させない」と、子供の個性と資質を伸ばす教育を放棄した公立高校、私立高校が廃校になるのは必然と言えるだろう。

(那須優子)

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