あのタモリがタクシー車内に財布を忘れ、何者かに持ち逃げされてしまったことがある。しばらくしてレストランで働くコックが、西麻布の交差点の垣根に捨てられたその財布を発見した。ところがその知らせは、なぜかタモリ本人ではなく、浅草キッドの水道橋博士へ。
それは博士が夕食後、自宅で妻とまったりしている時だったという。
「俺の携帯電話が鳴ったんですね。登録外だったんで取るまいか迷ったんですが、瞬間的にパッと取ったんです。で、『もしもし、そちらモリタさんでしょうか』。それが相手の第一声なんですよ。もちろん最初は当然、ただの間違い電話かなって思いますよね。切ろうとしたんです。そしたら相手が食い下がってきたんですね」
博士はそう語るのだが、電話の相手は畳みかけるように、
「実はですね、こちらでタモリさんのものと思われる財布を拾ったんです」
財布の中には、森田一義名義の車の免許証、船舶の1級免許証、たくさんのクレジットカードと電機店のポイントカード、そして自宅の鍵が入っていた。
ではなぜ、水道橋博士に電話がかかってきたのか。
「財布の中に電話番号だけが書かれた、ちぎれたメモがあった、って言うんです。で、そこでハタと思い出して。年末の『タモリ倶楽部』の時にタモさんとオーディオの話をして、意気投合したんですよ。で、タモさんが見せてくれるって言うので『ちょっと連絡先、教えといて』って言われて、俺が電話番号だけ書いたメモの走り書きを渡したんです」
そんな博士の説明を聞いて、なるほどと膝を打ったのだった。
(坂下ブーラン)
1969年生まれのテレビディレクター。東京都出身。専門学校卒業後、長寿バラエティー番組のADを経て、高視聴率ドキュメントバラエティーの演出を担当。そのほか深夜番組、BS番組の企画制作などなど。現在、某アイドルグループのYouTube動画を制作、視聴回数の爆発を目指して奮闘中。