ベトナム東南部に位置するバリア・ブンタウ省に浮かぶ、人口5000人ほどの小さな島、コンダオ島。ここにはフランスの植民地政権により、政治犯を収容するために1861年に建設された、コンダオ刑務所がある。ベトナム政府に移譲されたのち、現在は刑務所博物館となり、ベトナム有数の観光スポットとして知られている。
うっそうとした茂みの中に建つコロニアル様式の外観とは裏腹に、建物に一歩足を踏み入れると、そこに並ぶのはおびただしい数の独房と、囚人を模した不気味な等身大の人形が。異様な空気が醸し出す雰囲気が、観光客をゾクッとさせるのである。
アジアにおける戦争の歴史に詳しい研究家が解説する。
「政治犯収容施設だったコンダオ刑務所はベトナム戦争の勃発以降、『虎の檻(タイガーゲージ)』と呼ばれる戦争捕虜収容所として、その姿を変えていました。むろん、人権が重視されるような時代ではありませんからね。ベトナム戦争における捕虜は全員、動物かそれ以下のごとき扱いを受け、檻に閉じ込められたまま激しい拷問が繰り広げられました。2万人以上がここで亡くなったと言われています」
「虎の檻」は刑務所本棟から隠されるように、離れた場所に設置された。ベトナム戦争の調査のため、この刑務所を訪れたアメリカ議会派遣団によりその存在が明らかにされたのは、1970年だった。
「牢獄では連日、拷問による死者が続出。中でも無実を訴え続けていた女性囚のひとりは、最後に自分で腹を切り裂き、内臓を看守に向かって投げつけたのだとか。独房にはその女性囚を模した人形も置かれています。そんなおぞましい光景が日常化していた場所だけに、浮かばれない霊が彷徨っているとしても不思議はないでしょうね」(前出・研究家)
周辺では近年も幽霊の目撃談があとを絶たず、現地で「コンダオ島に観光に行きたい」と伝えると「あそこは100%幽霊が出るから、やめておけ」との返事があるという。まさにベトナム最大の心霊スポットなのだ。
その証拠に、コンダオ刑務所跡は、2013年11月に米CNNが発表した「アジアの最恐心霊スポット10選」に選ばれている。チケットを購入すれば、博物館と島に点在する収容所の見学が可能なので、度胸のある人はチャレンジしてみてもいいかもしれない。
ただし、浮かばれない霊が乗り移り、帰国後に精神的な異常をきたしたケースもあるというから、くれぐれも来訪は自己責任で…ということをお忘れなく。
(ジョン・ドゥ)