90年代〝若貴フィーバー〟の好敵手として大相撲を盛り上げた曙太郎さん(旧名チャド・ローウェン)が心不全で死去した(享年54)。93年に初の外国出身となる64代横綱に昇進、幕内優勝11回などその偉業は眩いばかり。しかし土俵外では数々の醜聞で世を騒がせた。その大波乱人生を振り返る。
88年、曙は同郷ハワイ出身の元高見山が師匠だった東関部屋から土俵デビュー。204センチ、230キロを超える巨体を生かした強烈な突き押しを武器に「花の六三組」の貴乃花(51)、若乃花(53)らと共に空前の相撲ブームを巻き起こした。特に「最強のガチンコ力士」貴乃花との対戦成績は50戦25勝25敗。まさに互角の強さを誇った。
93年7月の名古屋場所では「貴・若・曙による優勝決定巴戦」を制し、賜杯を手にした熱戦は瞬間視聴率66.7%! 実に国民の3人に2人が固唾をのんで見守った大一番として語り継がれている。
一方、私生活の方は、輪島大士、北尾光司、朝青龍(43)にも比肩するお騒がせ横綱だった。
最初の醜聞は93年に報じられた元AV女優・間宮五月との婚約騒動だ。
元AV女優だとは知らずに交際していた曙は、婚約者が過去にAV作品に出演していたことなどを報じられると、直後に〝1度目〟の婚約破棄を発表。
「92年に間宮が主演した『麗華』は村西とおる監督(75)率いるダイヤモンド映像が制作。当初700本しか売れない作品が、騒動後は〝曙の恋人〟として人気が爆発し、全国のビデオ店から注文が殺到した」(AV関係者)
続いて、「三宅裕司のいかすバンド天国」(TBS系)の司会などで人気だったタレント、相原勇(57)との婚約破棄だ。96年5月に2人は交際会見。その後は順調な交際で結婚間近と伝えられていたが、翌97年7月の夏場所で優勝した曙が一方的に婚約破棄を宣言。
2度目となる〝土俵際でのうっちゃり〟の真相は長いこと藪の中だったが、17年3月「今夜解禁!ザ・因縁」(TBS系)で、結婚式場の候補地とされた東京都内のホテルで20年ぶりに顔合わせした時のこと。
「要するに二股だった」などバラエティー番組で以前から曙の多重交際を暴露していた相原に対し、曙は、
「『別れた』と伝えたつもりだよ。俺が相撲取れない時、結婚ばっかり迫られて、何で励ましてくれないの?」
と声を荒らげた。しまいには「ふざけんな、ボケ!」と捨て台詞で退席するシーンもあったが、スタッフの説得でシブシブ〝取り直し〟に応じると、
「自分の中ではもうケジメをつけて終わっていることだし、いい経験というのは失礼かもしれないけど、そういう経験があったから今があると思っている」
すると、相原も、
「本当に会えてよかった。堂々と生きていける気がする」
と、吹っ切れた笑顔を浮かべるのだった。