7月26日、東京・調布飛行場を離陸直後の小型プロペラ機が住宅地に墜落し、8人が死傷。操縦士のミスが取りざたされる中、現地では墜落の予兆とも言える数々の「危険飛行」の目撃談が噴出しているのだ。
みずからも命を落とす「死のフライト」を演出した川村泰史機長(36)は、小型機のパイロットを養成する会社「シップ・アビエーション」の社長でもあったが、事故直後から数々の「疑惑」や「暴走」が浮上している。社会部記者が説明する。
「国交省に提出した書類には総飛行時間を1500時間と申告していましたが、事故機を整備・管理し、シップ社に貸し出していた『日本エアロテック社』には600~700時間と説明していたようです。シップ社は国から航空機使用事業の認可を得ておらず、クラブ運営方式による飛行訓練とうたっていた。にもかかわらず、副操縦士養成コース1600万円、事業用操縦士コース216万円などと紹介しており、無許可営業の疑いがあります」
エアロ社は記者会見で、川村機長の事業とは無関係だと強調。さらにはエアロ社に事故機を貸し出していた、もともとの所有者である不動産会社「ベル・ハンド・クラブ」の従業員は、「リース事業は先代社長がやっていたことで、現在はマンションの賃貸がメイン事業。貸していることなど知らなかった。現社長も『非常に迷惑している』と怒っています」
と、まるで人ごとのようなズサンさなのだ。
目的地だった伊豆大島までの片道分の5倍の燃料を積載し、離陸可能な最大重量ギリギリまで迫っていたことも判明。さらには、04年に起こした着陸失敗事故で損傷したエンジンを交換せずに使用、試運転なしで離陸‥‥次々と暗部が明るみに出てきたのだ。
地元住民も、墜落事故を予期させる「危険な兆候」を察知していた。市民団体「調布生活と健康を守る会」の飯野久子会長の憤激証言を聞こう。
「今回墜落した場所は住宅密集地です。実は以前から、民家の屋根スレスレかと思うほどの超低空飛行が続いていました。『物干し竿で機体を突っつけるんじゃないか』と言う住民もいたほどですから」
住民を脅かす異常な飛行実態。墜落事故は起きるべくして起こったのだ。
調布飛行場では、新島や大島など離島への定期便を運行しているが、企業や個人が所有する小型機の離着陸も可能。しかし、許可されているのは、操縦者の技量を維持するための「慣熟飛行」であり、観光目的の「遊覧飛行」は禁止されている。
「都は当初、同乗者全員が操縦免許を持たなければ慣熟飛行ではないとしましたが、のちに翻すなど、定義が非常に曖昧。慣熟飛行と届け出ても、観光目的が多いのが実態です。今回の川村機長の事故でもその疑いが出ています」(前出・社会部記者)
調布飛行場付近に住む、飛行場対策協議会の村田キヨ氏も、疑惑の目撃談を明かしてくれた。
「昨年の元日には離島への定期便以外に、祝日の飛行禁止時間帯である午前10時までの間に、11回もの小型機の離陸を確認しました。またある時は、4機が立て続けに連なって飛んでいったことも。これは明らかに遊覧飛行だと思い、飛行場に問い合わせました」
まさしく遊覧飛行が常態化していたことを思わせるが、飛行場は、
「役所から依頼されている航空写真撮影のためです」
と答えたという。航空写真を撮るために、そんなに飛行機を一度に飛ばす必要があるのか‥‥。そうした疑惑の飛行は最近まで続いていたようで、
「以前に比べて飛ぶ飛行機の数が増え、不安を感じていました」(近隣住民)
住民の声に耳を傾けず、重大事故を引き起こした責任は重い。