群馬県の中央前橋駅(前橋市)と西桐生駅(桐生市)を結ぶ、上毛電気鉄道の新型車両「800形」が、4月2日から全線で営業運転を開始している。2月29日から中央前橋駅と大胡駅(前橋市)の間を走り、運転手の習熟を行ってきたが、ついに上毛線全線での運転である。
800形は東京メトロ日比谷線で運用されていた「営団地下鉄03系」を改造した車両で、上毛電鉄は3編成6両を購入。今年から2026年まで毎年1編成ずつ導入される。現在、運用されている700型は、3編成が廃車になる予定だ。
25年ぶりとなる新型車両の導入だが、利用者は大喜びとはいかないようだ。鉄道ライターがそのワケを説明する。
「700型は京王電鉄の3000系車両を改造した車両です。新しいものでも製造から30年以上が経って老朽化が目立つようになり、置き換えが検討されました。当初は新型車両を製造する計画でしたが、予算の都合で営団地下鉄03系になった。利用者にしてみれば、新型車両のはずがお古になってガッカリ、といったところです」
それでも700型と比べると、大きく進化している。省エネ装備を搭載し、700型よりも消費電力が30%ほど減ったのだ。利用者に直接関係する部分では、運賃表示が液晶になり、見やすくなった。また安全性を守るため、車内には防犯カメラが設置された。何よりも嬉しいのが、ボタン開閉式になったドアなのだと、先の鉄道ライターは言う。
「上毛線は赤城山の麓を東西に走る路線なので、冬は赤城山から吹き下ろしてくる乾燥して冷たく強い『赤城おろし』をモロに受けます。駅に停車時、ドアが開くと赤城おろしが車内に入ってきて、震え上がるほど寒いんです。それが軽減するだけでも、ありがたい」
800形と700型の違いを体感するべく、ぜひ上毛電鉄を利用してほしい。
(海野久泰)