1968年メキシコ五輪以来のメダル獲得を目指すサッカーの大岩ジャパンに、思わぬ「横ヤリ」が入る可能性が出てきた。
男子のU23(23歳以下)日本代表は、パリ五輪アジア最終予選を兼ねたU23アジア大会準決勝でイラク代表を下し、8大会連続の五輪出場を決めた。
五輪本番では最大3枠ある、24歳以上のオーバーエイジ(OA)組のみならず、今大会では出場していない、A代表で活躍する選手たちも加われば、かなりの戦力アップが見込める。
だが、ルールの壁により、五輪世代ながら招集が難しい選手が存在する。それがリーガ・エスパニョーラのレアル・ソシエダでプレーするMF久保建英だ。
久保は今季、リーグ戦26試合に出場して7得点3アシスト。欧州チャンピオンズリーグにも8試合出場し、1アシストを記録している中心選手だ。長年、日本代表を取材してきたサッカーライターは、
「五輪はサッカー界最高峰の大会ではないですからね」
と話し、次のように続けた。
「五輪代表には、俗に言われれる招集レターでは呼べません。所属クラブが拒否するのは日常茶飯事です」
国際サッカー連盟(FIfA)の規定では、各国サッカー協会は年齢制限のないAナショナルチーム(A代表)同士の国際公式試合が行われる試合日の2週間前までに、呼びたい選手が所属する各クラブに「招集レター」を送って通知する。各クラブはその試合が、対戦日を指定された「FIFAインターナショナルマッチカレンダー」(国際Aマッチデー)で行われる場合、年間7試合までは選手を無条件に送り出さなければならない。
たとえ当該選手やクラブが代表招集を辞退、あるいは拒否したとしても、各国協会側がその選手の代表招集を撤回しない限り、クラブの試合には出場できない。
また、代表戦がW杯予選などの公式戦の場合は、試合日の4~5日前までに、親善試合の場合には48時間前までに、選手をクラブのスケジュールから解放する必要がある。
ところが五輪は、国際Aマッチデーには該当しない。前回の東京五輪でも、フランスは計8選手にOA枠での出場を打診したが、所属クラブがことごとく派遣を拒否。これが大きく影響したのか、予選リーグで敗退している。
今回の日本についても、OA枠をめぐって同様の事態を招きかねないが、五輪世代の久保に関しても、クラブ側が拒否する可能性はあろう。パリ五輪に出場して故障でもされたら、来季のチーム作りに大きな影響が出るからだ。今後、日本協会とソシエダによる、水面下の綱引きが激化しそうである。
(阿部勝彦)