パリ五輪アジア最終予選を兼ねたU23アジアカップ。U23日本代表は準決勝でイラクに2-0で勝利し、8大会連続での五輪出場を決めた。さらに決勝ではウズベキスタンを1-0で破り、4大会ぶりの優勝を飾った。
決勝の相手ウズベキスタンは、今大会最強ともいえる相手だった。グループステージを3戦全勝で首位通過すると、準々決勝ではサウジアラブアを2-0、準決勝ではインドネシアを2-0で下し、決勝に進出してきた。ここまでの5試合で14得点、無失点と圧倒的な強さを見せていた。主力選手人3人が所属クラブの事情により、準決勝終了後にチームを離れたが、日本にとって強敵であることに変わりはなかった。
試合開始早々から、日本はウズベキスタンの前線からのプレス、ボールへの寄せの速さに苦しめられた。思うようにボールを繋げず、FW細谷真大は前線で孤立。完全にウズベキスタンペースだった。現に前半、日本はシュートを1本しか打っていない。
後半になってもお互いに決定的なチャンスを作れず、試合はアディショナルタイムに突入。すると91分、途中出場の山田楓喜がペナルティーボックスの外から得意の左足一閃。ボールはゴール右隅に吸い込まれていった。その後、PKを与えたものの、GK小久保玲央ブライアンが止め、そのまま日本が逃げ切った。
大会を振り返ると、格下の中国、UAE(アラブ首長国連邦)には勝ったものの、圧倒的な強さで勝ち進んだわけではない。ライバルの韓国には敗れ、10人のカタール戦は延長戦までもつれ込み、決勝のウズベキスタン戦は完全に主導権を握られていた。それでもパリ五輪の切符をつかみ取り、大会にも優勝できたのは、チーム力ゆえ。
大岩剛監督は「選手、スタッフ全員で戦う」と口ぐせのように言っていた。ありきたりの言葉だが、それを実践するのは簡単なことではない。大岩監督はそれを形にした。
グループリーグ3試合で、メンバー23名のうち22名を使った。しかも誰が先発して出場しても、チーム力が落ちることはない。途中出場の選手も自分の役割を理解しているから、攻めるのか守るのかがハッキリしている。それだけ大岩監督が選手の特徴を理解し、自信を持って送り出している証拠だ。
そんな中で輝いたのは、キャプテンで大会MVPを獲得した藤田譲瑠チマの活躍。これは見逃せない。特にパリ五輪の切符を懸けたイラク戦での2アシストは圧巻だった。
グループリーグでは中国戦のみの先発だったが、決勝トーナメントに入ってからは3試合連続フル先発。それだけ大岩監督からの信頼は大きかった。MVP獲得は当然だろう。
影のMVPといえるのは、GKの小久保。初戦の中国戦で退場者を出し、70分以上も10人で戦わなければならない中、スーパーセーブを連発。そして決勝戦でのPKストップと、間違いなくチームを救った。
もうひとり気になったのは、右サイドバックの関根大輝だ。今大会最大の発見と言っていい。2022年11月のスペイン遠征では代表選手ではなく、トレーニングパートナーとして参加していた。代表に招集されて、まだ1年しか経っていない。
それが今大会では5試合に先発。運動量はもちろんのこと、クロスも中の状況に応じてグランダーのパスを出すなど、メリハリがある。静岡学園出身らしく足元の技術は高く、187センチの長身も魅力だ。
パリ五輪の登録メンバーは18名。今回招集できなかった海外組がいる。さらに24歳以上のオーバーエイジ枠3人をフルに使えば、今回の23名のメンバーから生き残るのは、約半分しかいない。
パリ五輪本番へ向けて、新たな競争が始まった。
(渡辺達也)
1957年生まれ。カテゴリーを問わず幅広く取材を行い、過去6回のワールドカップを取材。そのほか、ワールドカップ・アジア予選、アジアカップなど、数多くの大会を取材してきた。