牝馬同士によるマイルの女王決定戦、ヴィクトリアマイルが今週のメインだ。
今年で19回目と歴史の浅いGⅠ戦だが、テンから激しい競馬が繰り広げられ、見応えある一戦である。
今年はエントリーする馬が多く、フルゲート(18頭)は必至だ。
前哨戦の阪神牝馬Sの1、2着馬マスクトディーヴァ、ウンブライル、福島牝馬S勝ちのコスタボニータ、中山牝馬Sを制したコンクシェル、東京コースは〈1 2 2 1〉と実績のあるテンハッピーローズ。そして、最有力候補とみられる海外遠征帰りのナミュール、昨秋のエリザベス女王杯で3着に好走したハーパー、昨暮れのターコイズSで重賞初制覇を成し遂げたフィアスプライドのほか多彩な顔ぶれがそろい、興味は尽きない。
しかも、有力各馬の力に大きな開きはなさそうに見え、どう転ぶか、予断を許さないGⅠ戦だ。
まずは過去のデータを見てみよう。
これまでの18回で、馬単による万馬券は7回(馬連は4回)。この間、1番人気馬は5勝(2着4回)、2番人気馬は2勝(2着0回)。1、2番人気馬でのワンツー決着はわずか1回。大きく荒れることはそう多くないものの、波乱含みで難解な一戦であることは間違いない。
年齢的には、6歳以上の古馬は1勝(2着1回)のみで、出る幕は極めて少ない。波に乗る4歳馬が圧倒的で9勝(2着12回)、充実著しい5歳馬が7勝(2着5回)しているように、この2世代に焦点を絞ることが馬券のセオリーと言えそうだ。
当方としても最も期待を寄せたいのは、4歳馬のモリアーナだ。
新馬― 特別を連勝し、早くからクラシックも─と注目されていたが、体調が整わなかったり、レース中に不利を被ったりしてGⅠ戦(NHKマイルC6着、秋華賞5着)では、期待ハズレの結果しか残せなかった。
今年に入ってもAJCC4着、続く阪神牝馬Sが3着と、あとひと息足りない結果に終わっているが、いずれもコンマ3秒差以内での惜敗。年を越して馬体が大きくなり、たくましく成長してきたことは確かだ。
「3歳時は、気持ちの面でうるさいところもあったりして調整が難しかったが、ここにきて落ち着きが出てきた。なので、思いどおりの調教ができるようになっている。牝馬とは思えないほどどっしりしてきた」
と、武藤調教師も目を細めるほどだ。
中間の雰囲気も抜群によく、稽古の動きもリズミカルで力強い。この一戦に向けてケチのつけようがない調整が続けられている。
マイル戦は新馬戦を勝ったのみで〈1 0 2 3〉と取りこぼしも多いが、前記したように不利やロスが影響してのもの。強烈な末脚が身上の馬だけに、直線が長く、ペースが速くなりやすい東京のマイル戦は、この馬に合っているとみるべきだろう。
さらに血統(母系)もいい。5代母ハイクレアは仏オークス、英1000ギニーの勝ち馬で、名繁殖牝馬ウインドインハーヘア(ディープインパクトの母)の祖母。まさに頂点に立ってよく、良馬場を条件に大きく狙ってみたい。