夏競馬も佳境。余すところあと2週となった新潟のメインは、新潟2歳Sが行われる。
13年にはハープスター(桜花賞)が勝ち、2着にイスラボニータ(皐月賞)と両馬が翌年のクラシックで活躍してみせたが、ここで勝ち負けして翌年のクラシックも、というケースはマレ。やはり総体的には、仕上がり早で早熟型の馬が上位争いを演じている。
とはいっても、新馬戦が1カ月ほど前倒しにされて2歳馬のデビューが早まったことで、近年は評判馬も集まるようになった。
今年もなかなかの顔ぶれだ。新馬戦を下馬評どおり快勝したアスコリピチェーノ(英・愛2000ギニーなどGⅠ4勝馬が近親)、これまたデビュー戦を圧勝したエンヤラヴフェイス(快速を誇った名馬タイキシャトルが近親)、良血ルージュスタニング(祖父にBCクラシック、ドバイWCを勝ったアロゲートがいる)を筆頭として、各厩舎が将来を嘱望する馬がズラリと居並ぶ。それだけにファン必見の一戦と言ってよさそうだ。
まずはデータを見てみよう。02年に馬単が導入されて以降、これまでの21年間、その馬単による万馬券は7回(馬連は5回)。この間、1番人気馬は9勝(2着4回)、2番人気馬は2勝(2着3回)。1、2番人気馬によるワンツー決着は4回。06年から10年まで5年連続して馬単で万馬券が飛び出したが、近5年は4番人気以内の上位人気馬同士での決着。言ってみれば中穴傾向の重賞だ。
性別で見ると、過去21年間で牡馬が13勝(2着13回)で牝馬は8勝(2着7回)。牡馬のワンツーが7回あるのに対して、牝馬同士での決着は1回のみ。暑さに強く、仕上がり早の牝馬を牡馬がしのいでいる図式だ。このあたりは留意しておくべきだろう。
ということで期待を寄せたいのは、その牡馬。前述した有力馬の1頭、エンヤラヴフェイスをイチオシしたい。
均斉の取れた好馬体に加えて、前述したタイキシャトルのほか、兄に浦和記念を勝ったサミットストーンもいる。このように近親、一族に活躍馬が多い血統も魅力で、大物感は十分。
そして新馬戦の内容だ。逃げて3着に粘ったタイキヴァンクールを終始2番手で追走し、直線でいったん離されかけたが、追い出されると一気に加速。ゴールでは追い上げた2着馬に5馬身もの差をつけての完勝劇で、強いの一語だった。
手綱を取った菱田騎手も「とにかく性格がよく、完璧に近いレース内容。折り合いもつきやすく、2歳馬にしては注文が少ない」と手放しで褒めるほど。
そうした走りからも、単に2歳で完結するような馬には思えず、来春のクラシックを狙えるほどの素質馬ではなかろうか。
陣営のスタッフも「なかなかの馬。乗り味もよく、楽しみな逸材」と口をそろえているだけに、ここはチャンス十分とみた。
一方、札幌で行われるキーンランドCは、新潟2歳Sとは異なり、牝馬の活躍が目立つ重賞である。狙いは斤量面でも恩恵がある3歳牝馬のブトンドールだ。
前走の函館スプリントSは、2番人気に支持されながら5着と期待を裏切ったが、桜花賞9着以来で体重が10㌔増。追ってからの反応がイマイチだったのは、そのためだろう。
しかし使われたことで体が締まり、この中間の雰囲気がいい。昨年、新馬戦を勝ったあとの函館2歳Sを制しているように、洋芝は合う。一気の差し切りに期待だ。