さすが100年に一人の男やな。今季の大谷翔平は開幕直後こそホームランがなかなか出ずに心配したけど、開幕9試合目でドジャース移籍1号を放つと、快調にアーチを量産しはじめた。4月21日には、ゴジラ松井のメジャー通算を超える176号となる5号を放った。通訳だった水原一平の問題で平常心ではいられないはずやのに、プレーにはまったく影響を感じさせない。
きっと、真美子夫人も安心していると思う。結婚して成績が落ちてしまったら、嫌でも心ない声が聞こえてくるから。大谷も人の子。とんでもない裏切りにあって傷ついていないはずがない。愛妻と愛犬のデコピンの存在がプラスになっているんやろね。
いつも想像の上を行く選手やから、最終的な成績は予測しにくい。そもそも本人は数字にはこだわってないと思う。エンゼルスでは優勝争いしたことがなかったから、今はチームを勝たせることしか考えていないはず。勝つことが一番の楽しみなんとちゃうかな。
得点圏での打率が悪いのは、その気持ちが強すぎることにあると見ている。ロバーツ監督がチャンスで積極的になりすぎていることを戒めていたけど、それは仕方がない。勝ちたい気持ちが強い上に、指名打者での出場なんやから。他の選手が守っている間もベンチでやることがなく、やっと巡ってきた出番がチャンスの打席やったら、気持ちを抑えるのが難しい。
僕も肘を痛めて守れない時にDHで出場した経験があるけど、気持ちの持っていき方が難しかった。味方が守備の時にベンチ裏でバットを振ったり、うろちょろしていても、間が持たない。それに怖いのが、準備運動なしに打席が回ってきて、トップスピードで走らなアカンこと。守備についていれば1球ごとにスタートを切ったり、守備位置からベンチまでのジョグもいい準備運動になる。ピリッとくることなく、いつもいきなりトップギアに入れられる大谷はすごい。
イチローもそうやったけど、大谷もケガしないというのが特筆すべきこと。カブス鈴木誠也のようにせっかく好スタートを切ったのに、脇腹を痛めて、戦線を離脱したら元も子もない。大谷もこのまま出場し続けたら、イチローの持つシーズン最多記録の262安打を更新する可能性だってある。大谷の場合はヒット数だけでなく、本塁打も50本ぐらい打つんやから、とんでもない成績になる。
僕がひそかに注目しているのが、二塁打のペース。調べてもらったらメジャーのシーズン最多は67。今後、この数字がクローズアップされるはず。ちなみに僕の二塁打の自身最多は130試合制での35。大谷は25試合時点で11だから、162試合制では71になる計算。十分に狙える数字だ。
日本で3年連続の沢村賞に輝いた山本由伸ですら簡単には抑えられないのを見ていると、メジャーの打者のレベルの高さがわかるというもの。その中でも飛び抜けているのが大谷というのが、同じ日本人として誇らしい。歴代シーズン最多安打、歴代シーズン最多二塁打、2年連続本塁打王、三冠王、トリプル3(3割、30本塁打、30盗塁)、フォーティフォーティ(40本塁打、40盗塁)など、すべてが夢物語ではない。
今年は二刀流が見れずに残念やなと思っていたが、DHだけでもほんまに夢しかない。
福本豊(ふくもと・ゆたか):1968年に阪急に入団し、通算2543安打、1065盗塁。引退後はオリックスと阪神で打撃コチ、2軍監督などを歴任。2002年、野球殿堂入り。現在はサンテレビ、ABCラジオ、スポーツ報知で解説。