今週のGI・ヴィクトリアマイル(東京・芝1600メートル)には、今は亡き大種牡馬ハーツクライ、ディープインパクト、キングカメハメハの産駒が登場する。いずれも1頭ずつの出走だが、産駒数が年々少なくなっているだけに、大事な参戦と言っていいだろう。
このレースの「穴」を狙うならば、これら近年の「三大種牡馬の仔」に注目するべきと考える。
まずはハーツクライ産駒のハーパー(牝4、栗東・友道厩舎)から見ていこう。昨年の牝馬3冠④②③着であり、年長者相手のエリザベス女王杯(GI)でも3着と好走した。暮れの有馬記念で9着、今年初戦の大阪杯が13着と近走苦戦続きだが、牡馬相手のGIなので仕方あるまい。牝馬同士のGIなら、見直す必要があるだろう。
クイーンカップ(GⅢ)を含め、2勝を芝1600メートルで挙げており、距離適性は十分。東京コースも1勝、2着1回とパーフェクト連対だ。今回は新コンビの池添謙一で挑むが、GI26勝(うち牝馬GIを12勝)とう、大レースに強い騎手だけに、楽しみは増すばかりである。
ディープインパクト産駒のフィアスプライド(牝6、美浦・国枝厩舎)は昨年暮れのターコイズステークス(GⅢ)を勝って、重賞ウイナーの仲間入り。騎乗したのはルメールで、次走の中山牝馬ステークス(GⅢ)の手綱も取った。結果は9着ながら、2戦連続して騎乗したことは大きい。
ルメールはヴィクトリアマイルでは〈3・1・1・3〉と好相性で、2020年優勝のアーモンドアイは国枝厩舎所属馬だった。また、ディープインパクトはこのレース最多タイの4勝を記録している。注意すべきだろう。
最後に、キングカメハメハ産駒のスタニングローズ(牝5、栗東・高野厩舎)。一昨年の秋華賞(GI)勝ち馬だ。前走の大阪杯(GI)は逃げて8着だったが、0秒5差で、着順ほどレース内容は悪くない。長期休養明けをひと叩きして、体調は前走以上。調教で騎乗した西村淳也は、バネのある走りに「イルカみたいだった」と語っている。秋華賞でナミュールやスターズオンアースをねじ伏せた底力は侮れない。なお、キングカメハメハ産駒は、アパパネが2011年に勝利している。
人気は武豊騎乗のナミュールと、モレイラ騎乗のマスクトディーヴァだろうが、この2頭ですんなり決まるとは思えない。なにしろ1、2番人気の決着は、過去18回で2011年の1回だけ。荒れるGIレースとして名高く、2015年は1着5番人気、2着12番人気、3着に18番人気が入り、3連単2070万5810円というGI史上最高配当を叩き出している。
穴党は一考の余地があるのではないか。
(兜志郎/競馬ライター)