ただ、地道な努力の成果は、なかなか結果につながらなかった。
「16年の全米オープン、全英オープンで連続予選落ちしたあとは、かなり悩んでましたね。コツコツと下半身を鍛え、筋肉量が増えることで、スイングフォームも調整が必要となる。ここがゴルフの難しさです。一時は、90キロあった体重を落とすことさえも検討していた。フォームだけでなく、クラブの変更もあり、悩みは尽きない。昨年の全米プロで4位になっても、今年になってフォーム改造に取り組んでいるほどです」(スポーツ紙デスク)
下半身強化だけでなく、それに伴うフォーム作りに明け暮れてきた松山は、米ツアーの公式サイトの中で“練習の鬼”とまで称されている。
「米国では“居残りのヒデキ”として有名で、試合後、いつも最後まで練習している。ゴルフの技術トレも地味そのもので、ひたすら打ち込んで納得のフォームを体に刻むしかない。ただ、若いだけにオーバーワークを心配する現地の記者もいますよ。今年も2月に首を痛め、最近も肘にサポーターを巻いていた」(スポーツライター)
今や、海外記者からの注目度も増すばかりだが、メジャー制覇の夢こそつかみ取ってはいないものの、着実に実力を蓄えてきた。今季はすでに賞金総額が約6億6000万円で賞金王を狙えるポジションにつけている。レジェンド青木の言葉どおり、まさに“世界の松山”なのだ。
「彼に米国と日本の違いを聞くと、『米国は4日のうち、3日はハマらないと勝てないが、日本は1日ハマれば優勝できる』と話し、さらに『コースのレベルが違い、選手層の厚さが違う。集中を切らしてはダメ』と付け加えてくれた」(宮崎氏)
全米オープンでは初日こそ出遅れるも、2日目「65」、最終日「66」と、2度のラウンドベストを記録。宮崎氏が続ける。
「松山の言葉を借りれば、やはり3日ハマらないとダメってことでしょうか(笑)。でも、今回の大会で自分のプレーの核を見つけた。ウエッジでのアプローチショットがすばらしかった。下半身が安定し、スピンコントロールも、転がしても、高さを出しても、簡単そうにしっかりと寄せていた。このウエッジは、契約先のダンロップの傘下企業と3年余りにわたって徹底的にこだわって作り上げたもの。これを軸に組み立てていけば、いい結果につながると思いますね」
次のメジャー大会は7月20日からの全英オープン。全身全霊をゴルフに懸けた松山の一打は、いよいよ世界を制するかもしれない。その日が待ち遠しいばかりだ。