週明けの月曜日、日本列島に低く垂れ込める雨雲のような悲しいニュースが、SNSでトレンド入りした。
共同通信が配信した「けいれん発作を起こした子供が救急搬送を断られ、子供に重度の知的障害が残った」というものだ。Xだけでもアクセス数は33万件を超えた。この事案が起きたのは2023年4月で、新型コロナに関連した119番要請が相次ぎ、各地の救急搬送体制が崩壊していた時期である。
可愛い盛りの子供が突如、意思疎通も困難になり、親御さんが深い悲しみとやり場のない怒りを抱えているのが伝わってくる。だが、幼い子供を持つ親に過剰な不安と医療不信を抱かせる共同通信の記事には、救われる子供や親や救急隊員はひとりもいないだろう。
そこで悲劇を二度と起こさないために「子供が熱を出した時」に親がやるべきリストを書き出した。
①朝からの水分摂取量を記録しておく
②尿量と回数、色を観察する
③熱が出た時はジュースでもアイスでも味噌汁でも何でもいいので、糖分と水分摂取が最優先
④氷枕を手ぬぐいでくるんで子供に背負わせるか、頭に氷枕をあてる(眠っている時はさらにワキの下や足の付け根のソケイ部の窪みに保冷剤をあてる)
そして、親から見て子供の様子がおかしいと思ったら、
⑤スマホで動画を撮る
⑥けいれんが起きたら一部始終を動画撮影し、継続時間を記録する
この6つをやった上で、主治医や子供の救急相談窓口(#8000)、119番などに相談、搬送要請をしてほしい。
新型コロナの3年間、子供の意識障害の原因で多かったのは「熱性けいれん」よりも「脱水」だ。
喉が痛いから水を飲みたがらないと半日、あるいは1日そのままで放置していた親は多く、脱水や低血糖を起こして意識消失したり、全身に力が入らない子供がいた。熱が出た際はジュースはもちろん、コンビニでアイスクリームやゼリーを買って食べさせてもいいし、味噌汁やスープを飲ませてもいい。
親の中には絶対に糖分の入った飲み物は与えない、とこだわりが強い人がいるが、病院で小枝のような細い腕に点滴を刺す方が、子供にとってははるかに怖くて苦痛。しかも脱水が進むと、点滴針がうまく入らなくなる。なので自宅で点滴とほぼ同じ成分の経口補水液やジュース、飲むゼリーなどをこまめに飲ませてほしい。それまで水分補給ができていた子供が突然ぐったりしたら、そのタイミングで病院受診を。
けいれん発作、てんかん発作には種類がある。中には眠っているように見えて、長時間、意識消失している重症発作もあって、親や救急隊員では鑑別がしにくい。しかも119番通報した後、救急車が到着した頃にけいれん発作が止まっているのが一般的なので、何か子供の様子がおかしいと思ったり、けいれんが起きたらその動画を撮影し、搬送先の病院で医師に見せることで、医師の診断の手助けになる。
そして夜間の体調悪化で判断がつきかねる場合は、医師や看護師が残っている21時まで、早めに夜間救急受診を。その時間帯は医療スタッフが多いが、それ以降は診療を断る病院が多くなり、当直の医師しか対応できないので、長時間待たされることもある。
病院に行かずとも、オンライン診療や電話診療、重症の場合は医師が自宅にやってきて往診対応してくれるサービスもある。
そして…子供を持つ親に限らず、話し相手がほしい、熱を計ってほしいなど、迷惑な119番通報が子供の未来を奪っていることを、この国に暮らす人全てが知っておくべきだろう。
(那須優子/医療ジャーナリスト)