近年、ロボットにAI技術を搭載するAIロボットの普及が急加速している。特に製造業における進化は目覚ましく、最近では作業環境を認知し、自分の動きを調整するなど、その性能はすでに「自動化」から「自律化」へと突き進んでいる。
ところで、皆さんはそんな進化を続けるロボットの起源をご存じだろうか。
実はロボットという名前が生まれたのは、今から遡ること100年以上前の1921年。チェコの劇作家カレル・チャペックがプラハで書いた戯曲「Rossum’s Universal Robots(ロッサム万能ロボット会社)」 でこの「ロボット」という名前が使われたのが最初だといわれる。
つまり、ロボット発祥の地はチェコだと言っても過言ではないわけだが、そのルーツは、チェコの首都プラハ市内を流れるヴルダヴァ川の土で造られたとして古くから伝承される「人造人間ゴーレム」なのである。
ゴーレムはヘブライ語で「未完成のもの」を意味する。16世紀後半、プラハで暮らすユダヤ人たちは、キリスト教徒により迫害を受けていた。そこで迫害から逃れるため、ユダヤ教徒は賢者に懇願。そして土の塊から泥の人形を生み出した人造人間が、ゴーレムだったとされる。
ただ、ゴーレムを作り出した賢者が誰なのか、その時期がいつなのかについては諸説あり、どれが正しいのかはわかっていない。だが、中でも有名なのが、16世紀のプラハのラビ(ユダヤ教の神父)、イェフダ・レーヴ・ベン・ベサレルだとされる。
伝承によれば、レーヴは1520年にチェコのプラハ生まれで、神父であると同時に神秘思想家だった。そして「ゴーレムを造るように」との天啓を得た彼は娘婿と弟子を伴い、深夜にヴルダヴァ川へ出かける。そこで土を集め、「詩篇」の詩句を唱えて祈った。そして3人で土をこね、3メートル以上ある巨大な人型を造ったとされる。
3人が呪文を唱えながら、その人型の周りを何周かするうちに、なんと土人形から爪や毛が生え、ついにはその表面に人間の皮膚のような、うっすらとした光沢が生じる。神の名を記した護符をゴーレムの口の中に入れ、最後の呪文を唱えると、ゴーレムの目が見開き、やがて起き上がったというのである。
ゴーレムによる脅威もあり、やがてキリスト教徒によるユダヤ教徒への迫害は収まった。そして使命を終えたゴーレムは、ユダヤ教の会堂(シナゴーグ)の屋根裏部屋に連れていかれる。そこでベサレルら3人が呪文を逆に唱えると、ゴーレムの呼吸は停止。全ての儀式を終えた後、ゴーレムは土の塊に戻っていった。これがプラハで今も語り継がれる「人造人間ゴーラム」の伝説である。
現在もプラハに残る旧新シナゴーグには、ゴーレムの残骸が隠されていると信じられている。前述したAIロボットと3D技術の進化により、死者の姿を再現することも可能になった現代。もしかしたら近い将来、ロボットのルーツとなった「ゴーレム」が、3Dロボットとして蘇る日が来るかもしれない。
(ジョン・ドゥ)