往年のサッカーファンであれば、ラモス瑠偉(当時はヴェルディ川崎所属)の、あの物議を醸した問題発言を覚えている人は多いことだろう。
1998年6月26日、サッカーW杯の日本×ジャマイカ戦。試合は日本が1-2で敗れ、グループリーグで3戦全敗。初戦のアルゼンチンに次いで、第2戦のクロアチア戦にも敗れ、決勝トーナメント進出の望みは絶たれたものの、最終戦は有終の美で…と祈るファンにとって、その落胆はあまりにも大きいものとなった。
そんな中、NHKの中継に解説者として出演していたラモスが中継終了後、言い放ったのがこのコメントだった。
「ま、こんなもんですよ。あんまり言いたくないけどね。何人かの人は、こういう結果になるのは予想していたんじゃないか。戦争に行っているのに、Jリーグと同じ気持ちでやっている。こういう気持ちのないプレーヤーばかりだったら、負けるんじゃないかと思っていましたね」
さらに、名指しこそしなかったものの、代表最終選考で、同僚である三浦知良を代表から外した岡田武史監督に対し、
「Jリーグを引っ張ったベテランが、いきなり無視されたというのが悔しい。誰が責任を取るのか、見てみたい。日本のサッカーを良くするために、誰かがここで責任をとらなくちゃ」
そう言い放つと、怒りをあらわにしたのである。
ブラジル出身のラモスは、本場仕込みの高度な技術や絶妙なパスで、前身の読売クラブや川崎の優勝に貢献。前回W杯予選では、「ドーハの悲劇」に泣いた日本チームの司令塔として中心的枠割を果たしたことは、まぎれもない事実だ。
とはいえ、生中継での過激発言に放送終了後、NHKには「ラモスの言う通りだ。よく言ってくれた」と支持する声と「単なるドーハ組の私怨だろ」といった反発の電話が殺到。その数は15万5000件にも及び、阪神大震災時の14万件を上回る数だったという。
ただ、ラモスの過激発言はなにもこの時だけでなく、前週のクロアチア戦の際にも、中田英寿や城彰二らをヤリ玉に挙げて、
「まるでJリーグの気分でダラダラ戦い、中学生みたいなミスをする。ほとんど、ただの選手」
とりわけ、城については手厳しく批判し、
「ミスして笑っている姿なんか見たくない。全日本でもう城は見たくない。もうちょっと体張って、自分の仕事をやってほしい。タレントごっこやってるんじゃないんだよ」
結果、ラモス発言の影響もあったのだろうか、一部ファンの間に「戦犯は中田と城。三浦カズが出ていれば結果は違ったはず」といった声が広がり、激論が交わされることになったのである。
(山川敦司)