日曜日の夜に、こんな話を聞きたくなかった視聴者もいたことだろう。
モデルの「ゆうちゃみ」こと古川優奈が5月19日放送の「行列のできる相談所」(日本テレビ系)で、衝撃発言をブチかましたのだ。なんと週に1回しかシャワーを浴びないというのだ。
番組では「令和の新常識」として「お風呂は1週間に1回。湯船に入らないというわけではなく、シャワーも1週間に1回」という若者の声を紹介した。
このインタビュー映像に続いて、ゆうちゃみが発言。
「バレへんし、いいかって。いったん香水振っとけばいいかって」
MCの東野幸治らが唖然とする中で、ギャル芸人「エルフ」の荒川も追随。
「シャンプーしたら、髪の色が落ちちゃうんですよ。入るのがもったいないって感じちゃう」
2人が「新常識」に賛同したのである。
これを見て気になったのは、これからの季節、特にニオイが強烈になる「スソワキガ」。本人は気付かない、陰部からのモーレツな悪臭だ。
スソワキガは、体質や遺伝によって腋窩の皮膚の毛穴にあるアポクリン腺から分泌される汗が原因で強いニオイを発する「ワキガ」とは、ちょっと事情が違う。ワキガが腋の下を清潔に保ってもニオイが取れない、悩み多き「疾患」なのに対し、スソワキガは体質に加えて、本人の生活習慣によっても引き起こされるからだ。
スソワキガが出やすい体質はある。毛穴が多いほどアポクリン腺も多いため、デリケートゾーンが剛毛な人ほど、ニオイの原因となるアポクリン腺からの分泌物が多く、悪臭を発しやすい。脱毛ケアは毛根のメラミン色素を焼くのみなので、永久脱毛をしたからといって、アポクリン腺からの分泌が減るわけではない。毛穴のアポクリン腺を焼くには、また別の治療が必要となる。
アポクリン腺から出た汗と、汗に含まれる脂肪酸が下着の中で蒸れると、雑菌が繁殖。ネギや雑巾、カレーや腐ったヨーグルトのような悪臭を発する。さらにシャワーも浴びず、陰部を不潔にしていることで、尿、便、おりもの、ティッシュペーパーの拭きカス、恥垢…などをエサに、さらに雑菌が繁殖して、強烈な悪臭を発する。困ったことに、悪臭に慣れている本人には、悪臭の自覚症状がない。下着が黄色く汚れる人は、スソワキガを疑った方がいいだろう。
「シャワーも週1回」発言は、さすがに放送作家が台本を書いた「ネタ」かもしれないが、もしモデルが着た服の股の部分が黄色くシミになったら、興醒めもいいところ。カビや菌は、相手を選ばない。若い女性でもインキンタムシ、性器カンジダ、尿路感染症を引き起こし、重症化すれば不妊症にもなる。
バラエティー番組のネタを真に受けて「入浴は週1回」の不潔生活を送った結果、デリケート部分が腫れ上がり、病院で恥ずかしい思いをするのは自分自身だ。
ワキガやスソワキガは美容外科で自費診療、治療が可能だが、美容外科でもまずは患部を毎日清潔にするよう、指導している。
(那須優子/医療ジャーナリスト)