「元宝塚月組トップスター、詐欺容疑で逮捕」の一報が出たのは5月22日の夕方だった。元月組トップスターって誰だ、と思ったら、40年以上も前に在籍していた大滝子(だい・たきこ)ではないか。現在78歳。オールドファンには懐かしい名前だ。
折しも今年は宝塚歌劇団を広く世に知らしめた「ベルサイユのばら」初演から50年。それを記念し、大阪と東京で現在「ベルサイユのばら~半世紀の軌跡~池田利代子原作『ベルサイユのばら』より」が上演されている。
初演でオスカルを演じた榛名由梨、マリー・アントワネットを演じた初風諄ら、歴代のレジェントたちが公演替わりで出演しているのだが、その中に大滝子の名はなく、不思議に思っていたところだ。彼女は初演の舞台でフェルゼンを演じていたのだから。
宝塚歌劇団を退団後は「光原エミカ」という芸名で活動していたとは知らなかったが、映画製作への出資をもちかけ、ファンから約1000万円を騙し取ったというから驚く。毎年、ディナーショーを開いており、満席だったという報道もあった。宝塚ファンがいかに義理堅いかがわかる。
と同時に、言い方は悪いが、ファンからお金を巻き上げることで成り立っている宝塚スターたち。脈々と続くタニマチ体質がいけないのでは、と思う。起こるべくして起こったのでは、とも。
過去にも何度か宝塚スターの金銭トラブルが報じられたように記憶しているが、それもこれも劇団運営側が、お金についての指導をしてこなかったのが原因ではないか、と思う。これを機に、スターとファンの関係性についても、洗い直しをする必要があるのではないだろうか。
先日も、過去にチケットをお願いした宙組生徒から、公演チケットの案内が届いた。しかも写真付きで。彼女達にチケットをお願いすると、S席9500円にプラスして1500円のお花代を支払うという、暗黙のルールがある。このお花代は彼女らの大きな収入源になるのだが、いつも思うのは「このお金、ちゃんと申告しているのかしら」ということ。1公演に10枚受け持つとして、公演ごとに1万5000円の収入になる。20枚ならその倍、100枚なら15万円ナリ。これは劇団側も黙認しているわけだが、そういうことを続けてきた結果、今回の逮捕者を出すという結果に繋がったのではないか、とさえ思う。
創立110周年の宝塚歌劇団。悪しき慣習は捨てて、本当の意味で「清く 正しく 美しく」を目指してもらいたいものだ。
(堀江南)