5月21日から26日まで6日間の日程で、多摩川ボートでSGオールスターが行われた。自宅から多摩川ボートに行くにはルートがいくつかがあるが、旅打ちにはこれしかない行き方がある。
自宅最寄りの京王線笹塚駅から調布駅まで行き、京王八王子に向かって各駅停車に乗り換え、3駅先の武蔵台駅で降りる。そこから線路脇を歩き、右に畑を見ながら品川街道に出て左折し、そのまま住宅街を進むと西武多摩川線の踏切が出現。
その踏切を渡って左にマンションを見ながら右に進んだところが、多摩川線白糸台駅だ。ここで是政方面に乗って1駅目が競艇場前駅で、多摩川ボートに直結している。
白糸台駅で電車に乗るまでは、ギャンブル目当ての男たちの姿はまばら。田園風景の中をのんびり歩く。多摩川線の是政行きというのは時代劇みたいで風情があるし、しかも多摩川線は単線である。地方都市に出かけているかのように錯覚するくらいだ。
出かけたのは5日目、準優戦がある5月25日である。薄曇りだが、蒸し暑い。SGオールスターを前に、電撃ネットワークのダンナ小柳さんにボートレースのインタビューをし、連載させてもらった。
ダンナ小柳さんは首都圏では多摩川と江戸川を庭にし、仕事がない時は本場に出陣することが珍しくない。オールスターは3日目の5月23日に出かけている。都合がつけばもう1日、本場入りするということだったが、25日は欠場となった。
このシリーズで話題のレーサーといえば、モーターの角度(チルト)を目いっぱい上げてダッシュ、伸びに懸けた菅章哉だろう。普通はチルトはマイナス0.5か0程度だが、菅はチルト3までハネて戦った。イチかバチかマクり一発に懸ける作戦に出たのだ。イチかバチかだから、勝つか惨敗するか。その行方が気になっていた。
ダンナ小柳さんが出かけた3日目の菅は、シリーズ4走目にして初の1着になった。ダンナ小柳さんに「菅は買えないですよね」と連絡すると「今日に限って速いタイムでマクッて1着。買えそうで買えない」と返ってきた。まさにその通りだ。
多摩川ボートは入り口左横に、稲荷大明神が祀られている(写真)。まずここでお参りする。100円を入れてパンパン。いい1日でありますように。
まだ7Rが締め切っていないので、舟券を買いに急ぐ。後半戦に入って各選手がエンジンを調整し、スタートでうまくタイミングを合わせるようになり、セオリー通り、インが圧倒的に強くなった。7Rも①石渡鉄平がボートの速さの目安にするタイムのひとつ、展示タイムがいい。やはりここも①からで堅いと考え、1着①から2、3着②③④のフォーメーションで。
舟券を買ったら、ダンナ小柳さんが必ず寄るという入り口ロータリー前にある飲食店へと向かう。その中の1軒で、かつ煮鍋650円を小ビールで。甘辛でシャキッとする味わいだ。食べながら7Rを見ていたら、やはり①のイン逃げが決まり、3連単①③②、配当は2270円だ。よし、とった。「勝つ煮鍋」がよかったか。
サクサクと食べて、場内へと移動する。最近は施設改善が完璧なボートレース場が多いが、多摩川はレトロ感に溢れている。水面に面したホームスタンドの椅子席には、年季が入っている。
水面との間は芝生になっていて、ノンビリ感はハンパない。スタンド裏は天井が高く、むき出しだ。無駄に清潔感がないのがいい。何でも新しければいいというものではない。
場内の食べ物も、旅打ち寄りだ。多摩川ボートには名物「牛炊」がある。これは焼肉屋で食べるカルビクッパみたいな塩味で、旨味汁たっぷりの丼。これに唐辛子をバサッと入れ、味変させて食べる。二日酔いのギャンブラーにはこれ以上ないメニューだ。
牛炊を売っているレストラン「ウェイキー」に行ってみると、多摩川のソウルフードはソールドアウトだった。残念。来るのが遅かった。
SGも5日目、土曜日ともなると、場内は人でごった返している。飲食店に行列ができていたが、その中の「牛すじカレーの店」でミニカレー400円を平らげた。
レトロで多摩川ならではの食べ物がある多摩川ボートは、首都圏でもお勧めのギャンブル場だ。
(峯田淳/コラムニスト)