プロバスケットボールの世界最高峰リーグ、NBAのメンフィス・グリズリーズからの退団を発表し、来季は日本のBリーグに活躍の場を移すことになった、男子バスケ日本代表の渡邊雄太。
その渡邊雄太が5月30日、B1チームの川崎ブレイブサンダース(以下=川崎)主催の、元日本代表のニック・ファジーカスの引退試合にサプライズ登場した。
これには、全バスケファンが文字通り驚いたわけだが、渡邊が登場すると、平日にもかかわらず本拠地の「とどろきアリーナ」に集まった川崎のファンからは、ひと際大きな歓声が上がり、引退するニックから主役を奪うほどだった。
そして試合後には、この日の渡邊が川崎のチームカラーである赤いユニフォームを着ていたことから、「ブレイブサンダースに来てくれて泣きそう」「渡邊、川崎だってよ」などの声が、ネット上を席捲した。ところが、これは勘違いに終わってしまう可能性があると、バスケに詳しいスポーツライターが話す。
「この日は、確かにファジーカスのチームメイトである川崎の選手が多く出場しましたが、日本代表で一緒にプレーした田中大貴(サンロッカーズ渋谷)や竹内譲次(大阪エヴェッサ)らも参加、同じく渡邊は、あくまでファジーカスとの日本代表繋がりで出場したことを明言しています」
では、渡邊の川崎入団はファンの早とちりで、可能性はないのだろうか。今回のサプライズ登場でファンの間で予想が過熱してきた「渡邊の今後」だが…。
「Bリーグの各チームのロスター(公式戦に出場できる所属人数)は現在、だいたい12人程度。もし、渡邊を入団させるなら日本人枠を1人減らすことになります。ですから、すぐには発表できないでしょう。しかも、今年は7月にパリ五輪がありますからね。正式な発表は五輪後になるはずです」(前出・スポーツライター)
しかし、ファンからは気になる移籍チームの名前が次々と聞かれるが、そのあたりはどうなのか。スポーツライターが続ける。
「Bリーグ移籍発表で、真っ先に名前があがったのが、潤沢な資金のあるアルバルク東京でした。アルバルクは現在、お台場に2025年秋に開業予定の1万人規模のアリーナを建設中で、しかも暁子夫人(久慈暁子)は元フジテレビアナウンサー。渡邊を口説ける要素はたっぷりです。次にウワサされたのが、日本代表の富樫勇樹率いる千葉ジェッツ。今季のリーグ戦はワイルドカードぎりぎりでプレーオフ進出、しかも準決勝敗退で、一時の強さに陰りが見えました。富樫に日本人バスケ選手初の年俸1億円を提示した実績もありますし、高額年俸必至とはいえ、渡邊のことは喉から手が出るほど欲しいでしょうね」
しかし、まだ2年後とはいえ、26-27年シーズンから始まるBリーグのサラリーキャップ制度を考えると、日本代表選手が多数在籍していたり、強力な外国人助っ人を呼びたいチームには諸刃の剣とも言えそうだが…。前出のスポーツライターが語る。
「毎年のように移籍で大量の選手が動きますし、凄い選手だからただ欲しいというだけではバスケチームはうまくいきません。それでもDeNAを母体とする川崎が、今回の渡邊のサプライズ出場で獲得に名乗りをあげていたことは明白となりました。今季はプレーオフ出場を寸前で逃しましたし、元得点王のファジーカスが抜けた現在のロスターの面々を見ても、渡邊を最も必要としている強豪チームではないでしょうか」
妻が元局アナという背景や、日本代表選手が関東圏に集中しているといった理由から、専門誌の関係者は「関東の強豪チームではないか」と、やはりファンの意見と一致している。
東京か、千葉か、川崎か。少なくとも現時点では、川崎ファンは「ぬか喜び」とあきらめる必要はなさそうだ。
(飯野さつき)