6月2日、阪神がようやく交流戦初勝利で連敗を5で止めた。ホッとした気持ちで月曜日を迎えたトラ党は少なくなかっただろう。
その2日に行われた、ZOZOマリンスタジアムのロッテ戦では、1回表に飛び出した森下翔太の先頭打者本塁打という、文字通りの「スミ1」を先発の才木浩人が守り切った。才木にとっては、今季3度目となる完封勝利のオマケ付きだったが、一方で、別の珍記録も達成している。スポーツ紙デスクが説明する。
「初回先頭打者本塁打による『1-0』の試合は、長いプロ野球の歴史で14度目の珍記録です。セ・リーグのチームの達成は8度目で、阪神では1967(昭和42)年7月22日のサンケイ戦以来、何と57年ぶりで2度目。しかも、この時は村山→若生→権藤のリレーでした。一人の投手での達成は、阪神では史上初の記録です」
才木の快投でチームは連敗を5でストップしたが、9回にはこの試合初めて先頭打者の小川龍成に出塁を許すと、続く髙部瑛斗がショートへの内野安打で無死一、二塁のピンチ。連日の悪夢が頭をよぎったと、前出のスポーツ紙デスクが振り返る。
「5月31日の対ロッテの初戦は、9回表まで4-3でリードしたものの、最終回に守護神・ゲラが四球連発から髙部の犠牲フライで追いつかれ、10回には漆原大晟が押し出し四球でサヨナラ負け。6月1日の2戦目も、2-1で1点リードの9回裏に、今度はもう1人の守護神・岩崎優が同点打を浴び、延長11回裏に今季初登板の西純矢が愛斗にサヨナラ打を浴びました。それだけに、ファンも『まさか3日連続でサヨナラ負けか』と頭をよぎったはずです。ですが、阪神ベンチは才木を続投させ、何とか勝利をもぎ取った。116球を一人で投げきった才木様々という勝利でしょう」
連敗は止まったとはいえ、これで3カード連続で負け越し。5月24日に巨人・戸郷翔征に、甲子園球場では59年ぶり、対巨人では88年ぶりというノーヒットノーランを食らって以降、完全に流れが悪くなってしまった印象だ。
しかし、この日は記録のお返しとばかりに、才木が球団史上初の〝珍〟完封劇を達成した。まさにお祓いは済んだということで、6月再浮上のキッカケとしたいはずだ。では、そのポイントとなる選手は誰か。スポーツ紙デスクが話す。
「4番から6番に降格した大山悠輔の不振は深刻で、勝利した2日も3タコで打率はとうとう2割を切りました。投手では、ここのところ失点する場面が多い岩崎とゲラの2人も、リフレッシュが必要でしょう。そこで4番の代役はズバリ、佐藤輝明しかいないでしょう。ファームでは連日のマルチ安打で打率は3割以上。課題の守備も徐々に改善されているように見えますし、同じ轍を踏むとは思えません。交流戦ではロードでDHにも使えますからね。そして守護神には、石井大智をぜひ推したい。石井は5月4日に1軍に復帰して以降、10試合連続無失点中と安定している。三振が取れるし、ここで思い切ってストッパーとして使ってみると、チーム大躍進の原動力になる可能性があります」
交流戦のセ・リーグ球団は現在のところ、どのチームも突っ走る気配はない。まだ「アレンパ」が脅かされる状況にないことは事実だけに、岡田監督が思い切った策に出るなら、これはおもしろいことになりそうだ。
(石見剣)