パリ五輪でメダル獲得を狙うサッカーU-23日本代表が、最終メンバー18名に残るための最後のアピールの場、アメリカ遠征に出発した。
ご存じのように、このチームの中心として期待されていた久保建英(レアル・ソシエダ)、鈴木唯人(ブレンビー)の所属クラブが「五輪招集には応じられない」と表明したため、五輪本番には不参加となった。オーバーエイジ(OA)枠の招集にも苦戦しているだけに、このアメリカ遠征は貴重な強化の場になる。
そんな中で注目してほしいのが、復帰組でオランダリーグのスパルタ・ロッテルダムの両サイド担う、斉藤光毅と三戸舜介。そしてもうひとり、唯一の初招集となった、鹿島アントラーズ佐野海舟の弟、佐野航大(NEC・ナイメヘン=オランダ)である。
斉藤は左サイドの仕掛け人であり、このチームに欠かせないドリブラーだ。細かいステップで緩急をつけたドリブルは、相手を混乱に陥れる。右利きの左サイドということで、カットインしてのシュートも得意。このチームが立ち上がった時から常に、主力として選ばれ続けてきた。
横浜FC時代、高校2年生でトップチームに登録されると、各年代の代表メンバーに選ばれ続け、将来を嘱望された存在だ。19歳の冬、ベルギーリーグ2部のロンメルSKに移籍。2022年には現在のスパルタにレンタル移り、7ゴール5アシストと活躍した。
今季は右ハムストリングの手術などで約4カ月間、チームを離れた。それでも22試合に出場して3ゴール、5アシストを記録。すでにオランダリーグの名門クラブ、イングランド2部リーグへ移籍の噂があり、確実にステップアップしている。U-23日本代表にとって、頼もしい選手が帰ってきたといえるのではないか。
斉藤とともにスパルタでプレーする三戸は、身長164センチと小柄なドリブラーだが、圧倒的な突破力がある。一瞬でトップスピードに乗る加速力を持ち、パンチ力のあるシュートが魅力。スパルタでは右のサイドアタッカーだが、左も真ん中も問題なくこなせる。先発はもちろんのこと、ベンチスタートでも途中出場で試合の流れを変える力は十分にあるだろう。久保が招集できない今、三戸が貴重な存在になってもおかしくはない。
初招集の佐野が最終18名に残るのは簡単ではない。それでも大岩剛監督が招集したのは、鈴木の代役を探している証左だ。
佐野は今季からNECに移籍した。前半はベンチスタートが多かったが、年が明けた1月中旬からは全試合に先発出場を果たした。本来の中盤のポジションではなかったが、自身の良さを十分に発揮していた。
大岩監督は佐野のポジションについて「我々のグループでは6番、8番」と、本来のポジションである中盤での起用を示唆した。彼の良さは展開力のあるパスであり、細かいテクニック。そして2列目あるいはペナルティ・エリアに入ってのシュートと、攻撃的なセンスが売りだ。初招集で戸惑うこともあろうが、自分の良さをアピールしてほしい。
久保、鈴木が招集できない状況下、誰がU-23日本代表の攻撃を担うのか。アメリカ遠征ではこの3人を注視してほしい。
(渡辺達也)
1957年生まれ。カテゴリーを問わず幅広く取材を行い、過去6回のワールドカップを取材。そのほか、ワールドカップ・アジア予選、アジアカップなど、数多くの大会を取材してきた。