現代と違い、まだ人々の間にUMAという概念がなかった18世紀後半、地元住民によって生け捕りにされ、当時の新聞記事にその奇怪極まる姿がスケッチで描かれた謎の生物がいる。タギュア・タギュア・ラグーンである。
この生物は、南米チリの首都サンティアゴ周辺の湖に生息。昼は湖底で魚を餌にしているが、夜になると湖から姿を現し、牛や豚といった家畜を食い荒らしていたという。
そこで、1784年のある日、地域に住む男たち総勢100人が集結。銃を手に、この化け物退治に乗り出した。
男たちの前に姿を見せたのは、顔は一見して人間を思わせるものの、頭には角が生え、牙を持ち、コウモリのような翼と2本の尻尾を持つ、不思議な怪物だった。
男たちはこの奇妙な生き物を殺さず、生け捕りにすることにした。体長は18メートルもあったという。
「フランスの『Courier de L’Europe』という新聞には同じ時期に、チリにある他の湖でも同様の怪物が捕獲されたという記事が載りました。それによると、この怪物をヨーロッパに送る予定だと。なぜ中南米の出来事がフランスの新聞で報じられたかは不明ですが、この記事は現在も、パリの国立図書館に収蔵されている。全くの眉唾モノとは言いがたいような…」(UMA研究家)
さて、スケッチとして描かれたその風体は、UMAというより、古代神話に出てくる怪物といったいでたちだった。
「これは贅沢の限りを尽くして民衆からの批判を受けたマリー・アントワネットを風刺したものであり、謎の生物が捕獲されたという騒ぎに便乗して、彼女を『食物や家畜を食い荒らすドラゴン』に喩えたものだ、という説があります」(前出・UMA研究家)
動物学者は「生物学的に考えても、こんな形をした生物が生存していた可能性は低い」としている。そうなれば、新聞記事に残る特徴を含めた具体的な出来事は、全てが作り話ということに。ではなぜ、イラストまで掲載したのか。なんとも腑に落ちないのだ。
(ジョン・ドゥ)