誰が出場しても大差で勝って当たり前。そうした試合の評価は難しい。
2026年サッカーW杯の北中米大会出場を目指している日本代表が、アジア2次予選のアウェーで、ミャンマーに5-0と快勝。すでに最終予選進出を決めていたが、この勝利でグループリーグ首位通過となった。
その消化試合ともいえる戦いで目を見張ったのは「攻撃的な3バック」。第2次森保ジャパンになってから、試合途中で3バックに変更したことはあっても、試合開始から3バックを採用したことはない。
3バックは真ん中に谷口彰悟、左に伊藤洋輝、右に橋岡大樹を置いた。ところが対戦相手のミャンマーのシステムは、5-4-1。5枚と4枚のブロックを作り、ワントップだ。格下のワントップに対し、日本は3枚で対応していた。
攻撃的な3バックというなら2枚でワントップを見て、もうひとりは高い位置に上がって攻撃に関与するべきだった。途中から伊藤が攻撃に参加するようになったが、相手のシステムや状況に応じて臨機応変に対応しないと、アジア最終予選では通用しない。
約4年半ぶりの先発となったFW小川航基は、前半はパスで崩そうとする周囲と機能せず、何もできなかった。後半に相馬勇紀が投入され、サイドからのクロスが増えたことで2ゴールを決めたが、ライバルの上田綺世に差をつけることはできなかった。
初招集の鈴木唯人は後半から出場したが、インパクトのあるプレーは見せていない。それでも今回の招集で、代表のサッカーやメンバーのプレースタイルの特徴は理解したはず。それを次に招集された時に生かせばいい。
そんな中、格の違いを見せつけたのが、昨年11月以来の招集となった鎌田大地だ。
中村敬斗の先制点をアシストしただけではなく、幾度となくチャンスに絡んでいた。51分に鈴木にシュートを打たせたダイレクトパスは、思わず「うまい!」と唸る、センスあふれるものだった。
日本の2列目は小柄でドリブルが得意な選手が多いだけに、鎌田のような体(身長184センチ)があってフィジカルが強く、パスで相手を崩せる選手がいるだけで、攻撃に幅が出る。
ミャンマー戦では下がってボランチの位置からゲームを組み立てたり、旗手怜央とポジションを入れ替わったり、中盤の至るところに顔を出して、ボールを引き出している。日本の攻撃の中心選手として期待したい。
9月に始まるアジア最終予選には、誰が出場しても大差で勝てる相手はいない。これから本当の意味で、W杯予選が始まると言っていい。
(渡辺達也)
1957年生まれ。カテゴリーを問わず幅広く取材を行い、過去6回のワールドカップを取材。そのほか、ワールドカップ・アジア予選、アジアカップなど、数多くの大会を取材してきた。