これまで多くのトーク番組が生まれては消えていく中、最も長く続いているのが「徹子の部屋」(テレビ朝日系)だ。
1976年2月に始まった同番組は現在、49年目。放送回数は1万2000回以上を数える。黒柳はゲストにまつわる情報をスタッフから聞きながら手書きでメモし、自ら話す順番を組み立てているという。つまり彼女は、番組の構成作家でもあるのだ。まさに「徹子の部屋」だといえよう。
そんな長寿番組が長寿たらしめる秘密は、黒柳の話術もさることながら、ある「発明」の存在が大きい。それが、ゲスト本人が以前に出演した時の過去映像だ。テレビ番組制作スタッフが言う。
「トーク番組では旬の人を招き、その生い立ちやブレイクまでの道のりを語ってもらったり、あるいはプライベート素顔を覗き見したりするものが多い。ただし『徹子の部屋』のように、これだけ放送回数を重ねていると、毎回、初登場のゲストだけをブッキングすることはできません。だから、これまで出演した芸能人を再び呼ぶことの方が多くなっているのです」
そこで採られているのが、過去映像を流して現在の本人に見せる、という手法だ。「ずいぶん若いですね」など、本人がかつての自分への感想を口にするのである。しかも、以前話したであろう同じ話題を何回もコスる、という荒業をやってのける。
「常に鮮度のある話題に触れてもらうのがトーク番組の常識ですが、それを軽々と越えている。もちろんそうせざるをえない事情はあるのでしょうが、いずれにしても『徹子の部屋』だからこそできる展開です」(前出・テレビ番組制作スタッフ)
ちなみに6月10日放送回のゲストは、演歌歌手の小林幸子だった。デビュー曲「ウソツキ鴎」で幸先のいいスタートを切ったものの、それ以降はさっぱり売れず苦労したことや、代表曲「おもいで酒」が有線放送で1位を獲得したことが信じられず、自分で有線放送に電話して確認した話など、ファンにはよく知られた話を再び展開。もちろん、かつての出演映像もプレイバックしていた。
現在90歳の黒柳。番組を100歳まで続けたいと、昨年のインタビューで語っている。これまで説明してきた通り、昔の映像を使い回し、コスられ倒したエピソードを繰り返すという手法を続ける限りは、番組が終わる心配がなく、「100歳まで」という夢はかなうだろう。
(橋下茂)