3人組バンドMrs.GREEN APPLEの新曲「コロンブス」のミュージックビデオが、波紋を広げている。6月14日放送予定の「ミュージックステーション」(テレビ朝日系)は急遽、演奏楽曲を差し替え。同曲を使ったコカ・コーラ社のCMも、放送中止の事態になっている。
それも当然のことだろう。ミュージックビデオの内容は、大航海時代のコロンブスのごとき衣装のメンバーが猿に乗馬やピアノを教えたり、人力車を引かせるというもの。世界史でスペインによるアメリカ大陸原住民の虐殺行為を学んだ、人並みの教養と一般常識を持ち併せている者なら、20秒も正視できない。公開された6月12日の深夜には、SNSの批判コメントですでに大炎上していた。
ところが翌13日、民放テレビ各局は「THE TIME,」(TBS系)、「ZIP!」(日本テレビ系)、「めざましテレビ」「ノンストップ!」(フジテレビ系)、「グッド!モーニング」(テレビ朝日系)などで、問題のミュージックビデオをそのまま流した。ドジャース・大谷翔平の個人情報漏洩や「セクシー田中さん」原作者の急死をめぐる対応で世間とのズレが指摘される民放テレビ局の人権意識の低さが、改めて露呈した。
これが決定打となり、問題のビデオは公開中止に。ボーカル・ギターの大森元貴が公式サイトに〈あらゆる可能性を指摘して別軸の案まで至らなかった我々の配慮不足が何よりの原因です〉と謝罪文を掲載する事態となった。
そこで改めてSNSのトレンド入りしたのが「#コロンブス」。注目されたのは、ASKAが飛鳥涼名義でかつて光GENJIのために作詞作曲した「パラダイス銀河」の歌詞「しゃかりきコロンブス」だった。この歌詞の解説については本サイトでバズっている別記事を参照してもらうとして、ASKAは曲の中で子供たちの夢の世界を歌っており、世界で評価が分かれるコロンブスの偉業について触れたわけではない。
この曲は今でも特別支援学校に通う障害児と卒業生が大喜びで合唱している名曲で、光GENJIがローラースケートで疾走する、スピード感あふれるダンスと実にマッチしている。
これに対し、日本コカ・コーラ社のCMタイアップ曲であるMrs.の歌詞は「コロンブスの高揚」「謝りたい」と原住民の虐殺と植民地支配を暗喩しており、完全に「アウト」。よりによって同社を世界的大企業に押し上げた大人気飲料は、元はといえば、中南米大陸原産の「コカ」の実と葉を原料に作られていた。
ヨーロッパ人は中南米の黄金とコカの実などのスパイス、トマトなどの植物を手に入れるために虐殺と略奪に及んだのだから、同社がMrs.に「コロンブス」というタイアップ曲を採用したことには絶句するしかない。
企業もテレビ局も思考停止に陥っている…そんな現状に強烈なアッパーをかました、あるXユーザーの自虐に満ちた名言を紹介しておこう。
〈この曲の題名と歌詞がコロンブスでなくペリーだったら問題なかった〉
(那須優子)