それまで長く不遇の時期を過ごしてきた芸人が、一夜にしてスターダムにのし上がることがある。そのキッカケのひとつが「M-1グランプリ」(テレビ朝日系)だ。日本一面白い漫才師を決めるという趣旨のもと、2001年から開催。第1回大会の優勝者「中川家」を皮切りに、多くの芸人が成功の切符をつかんでいった。
こうしたお笑いコンテストは、各局に存在する。No.1ピン芸人を決める「R-1グランプリ」(フジテレビ系)や、次世代を担うコント師の頂上決戦「キングオブコント」(TBS系)、女芸人No.1決定戦「THE W」(日本テレビ系)といったものがそれだ。だが年末の風物詩として今や国民的な関心事となった「M-1」での優勝は、やはり注目度が断然違う。
「2007年、敗者復活戦からいきなり優勝したサンドウィッチマンや、2008年の第8回大会で準優勝したオードリー、2021年に第17代王者となった錦鯉など、今やテレビで見ない日はないスターを、数多く輩出しています。もちろん、麒麟や千鳥、ナイツといったコンビもまた、この大会から足がかりをつかんでいます」(お笑い番組スタッフ)
ところが最近は、「M-1」優勝を機に人気が爆発した中堅芸人の仕事が寂しいと言われている。お笑い番組スタッフが続ける。
「例えば、ブラックマヨネーズです。2005年に優勝して仕事が急増し、『ホンマでっか!?TV』(フジテレビ系)や『ニンゲン観察バラエティ モニタリング』(TBS系)といった番組で知られますが、ここのところ、小杉竜一のピン出演が増えている。これはひとえに、相方の吉田敬が家族との時間を大切にしたいと、大阪へ戻ってしまったことが原因として挙げられます。コンビとしての東京での稼働が少ないことから、小杉だけ仕事が入れられているのでしょうが、呼ばれる番組は同じ吉本芸人が司会の番組が多い。バーターの噂が立ったとしても、否定できないでしょう」
もうひとり、意外な人物がいる。フットボールアワーの後藤輝基だ。かつて次世代MCと言われ、「今夜くらべてみました」(日本テレビ系)をはじめとして、MC担当番組は多かったものの、相次いで終了。2022年9月、木曜夜7時の枠で始まったバラエティー番組「ニンチド調査ショー」(テレビ朝日系)は、わずか1年で撤退した。これは「ザ・ニンチドショー」としてリニューアルされ、土曜夜10時に降格している。
「ほかは『行列のできる相談所』(日本テレビ系)の週替わりMCしかないことから、『酒のツマミになる話』(フジテレビ系)などに頻繁に呼ばれている。こちらもまた小杉同様、吉本芸人絡みの番組が多いですね」(放送作家)
もちろん人気が落ち着いたという見方はできるが、千鳥や麒麟・川島明など、優勝したくてもできなかったコンビと比べると、やはり見劣りしてしまうのは否めない。はたして彼らは再浮上することができるのか。
(木下弘明)