東京都民にとって「誰が勝っても悪夢」という七夕決戦の都知事選が終わり、永田町の関心は次のフェーズに。9月に控える自民党総裁選の大一番だ。「ポスト岸田」の大本命が不在で国民にシラケムードが漂う中、続投に色気を見せる岸田総理は、党内から無理難題を突きつけられているようで‥‥。
共同通信が6月に実施した、「自民党総裁選で誰が総裁になるのがふさわしいか」という世論調査では、1位が26.2%を獲得した石破茂元幹事長(67)だった。続いて小泉進次郎元環境相(43)が12.1%、河野太郎デジタル相(61)と上川陽子外相(71)が並んで7.8%と、トップ3を「小石河連合」が占める結果となった。現職である岸田文雄総理(66)は得票率が6.6%の6位にとどまり、有権者から三行半を突きつけられる形となった。
総理在任期間で断トツ1位(3188日)の「アベ超え」を目指す歴代8位(1007日、7月6日現在)の岸田総理。あまりの不人気に、党内の求心力が急低下していることも手伝って、もはや崖っぷちに追い込まれたも同然だ。しかし本人の焦りとは裏腹に、意外にもポスト岸田選びの動きは鈍い。政界に詳しい作家・ジャーナリストの山村明義氏が言う。
「総裁候補とみられる議員は、報道陣の出馬の問いかけにお茶を濁すばかりです。これは永田町に『総裁選で早くから立候補を表明したら潰される』という古くからの因習があるからでしょう。目立った動きはなく、せいぜい菅義偉前総理(75)が、複数の候補者と会食の場を持つくらい。ただこの菅前総理の動きについては、『誰を推すかはわからないが、岸田降ろしは絶対に遂行する』という固い意思表明とも見て取ることができると思います」
一方で、ベテラン政界関係者は、「『小石河連合』含め、若手総裁候補が頼りない」とボヤき、こう続ける。
「進次郎にしても河野さんにしても、まだ大臣としての実績が乏しい。彼らの国家観や外交スタンスを、いっぺん腹を割って聞いてみたいところだ。政治家としてどういう考えを持っているのか、それがわからないうちは若手だろうが、我々みたいな年寄りだろうが、誰も応援はしませんよ。
結局、騒いだところで彼らはポスト『ポスト岸田』だよ。岸田さんの次の次、ぐらいのポジションにすぎない。石破さんに至っては、党内シンパがゼロに等しい。本人も最近ようやくそのことに気づいたのか、かつての大物議員と呼ぶべきお歴々にも、いろいろ付け届けを始めているようだ。だが、誰も彼を総理候補だなんて思っていない。見たところ、総裁選に関しては蚊帳の外ですよ。
菅さんがああだこうだ言っているみたいだが、この3人に限っては、ポスト岸田の先を見た牽制にすぎないでしょう」
党全体が「支持率低迷著しい岸田政権では、次の選挙で勝てない」とわかっていながらも、次に推すべきリーダーが見当たらないというジレンマに陥っていることは間違いない。山村氏はこう語る。
「結局、岸田総理がこんなにも支持されていないのに、本人はまだまだやる気、というのが自民党の迷走の根底にあります。岸田さんは6月23日に通常国会が閉会するなり、29日に山梨県で企業視察を行い、県連の幹部らと懇談しています。これは明らかに総裁選に向けた、地方票を取り込む動き。こうした党内の票操作は例年なら8月の中盤から後半、そして9月上旬あたりに本格化するものです。総理本人もアンチ勢にしても、今回はかなり早くから動き出しているといっていい」
互いにロングスパンでの暗躍が始まった、ということか。