そしてラストの条件は、「萩生田光一前政調会長(60)の要職再抜擢」なるウルトラCだという。
かつて「安倍派5人衆」の一翼を担った萩生田前政調会長は現在、裏金問題による1年間の党役職停止処分中のため、実現させたとしても処分明けのタイミングで、ということになる。つまり総裁選よりも後のことだが‥‥。
「表向きには派閥(安倍派)は解散されたことになっているし、裏金問題で旧安倍派に愛想を尽かした議員も少なくない。かつては約100名いたと言われるが、今は50名前後しか残っていないだろう。
ただ岸田さんとしては、旧安倍派の票が他の総裁候補に流れるのは避けたいはずだ。中心にいた『5人衆』の中でも、やはりグループをまとめることができるのは萩生田だろう。
私から見れば、萩生田は総裁の芽もなくはないが、まだ若い。一度、岸田さんのもとで幹事長なり官房長官をすることで、党内はもとより国民にも『ポスト岸田』としての存在感をアピールさせた方がいい。そう説得して旧安倍派を吸収すれば、来たる総裁選でも優位に立てるはずだ」(政界関係者)
以上の3つが、岸田総理が達成を余儀なくさせられるハードルだという。いわば、自分で壊した派閥政治に再び力を借りるべし、という注文だ。ただし山村氏は、特に3つ目の条件に疑問をぶつける。
「オーソドックスな見方とも言えますが、私が取材した限り、旧安倍派の若手・中堅には、萩生田さんにすらついていけない、と考えている議員が大勢います。自身の選挙で勝てるかどうかわからなければ、いかに党内のコンセンサスが『岸田続投』に向かうとしても、必死に抵抗するでしょう。中には『当選4回以下の若手の意見をまとめよう』という機運すら高まっています。党の上層部も、『無視できない数だが旧安倍派はもうまとまらない』と思っているはずなのですが‥‥」
衆参合わせて371人の国会議員を抱える自民党。派閥というまとまりを失った今、烏合の衆が暗闇の中で勝ち馬を手探りしているようにも映る。
ただいずれにしても、党の論理で次の総理大臣が決まることに変わりはない。9月の総裁選は、「岸田続投」という民意に反したバッドエンドを迎えるのか。地獄の岸田劇場、第二幕が明けようとしている。