遡ること4万5000年の先史時代、オーストラリアには「ゲニオルニス・ニュートニ」と呼ばれる、体高2メートル、体重が200キロを優に超える巨大な飛べない鳥が生息していたとされる。
ゲニオルニスはギリシャ語で「アゴの鳥」を意味し、アヒルやガチョウなどのドロモルニス科に属す、ということまでは以前の研究で判明していた。ところが化石記録が不十分なため、その正確な姿は謎に包まれていた。
そんな中、豪フリンダース大学の研究チームが、本種のほぼ完全な頭蓋骨を発見したとして、研究結果を6月3日付の科学雑誌「Historical Biology」にまとめ、大きな話題になった。
ゲニオルニスの化石が初めて発見されたのは、1800 年代後半。ただ、頭部の保存状態が悪く顔の復元は不可能だった。しかしこのほど南オーストラリア州北東部の塩湖で見つかった頭骨などの化石はほぼ完璧に近いもので、巨鳥の姿や生態が徐々に明らかになってきた。
「研究結果によれば頭蓋が短く、名前の通りアゴが大きく頑丈かつ立派。アゴの筋肉の配置から、想像以上に噛む力が強かったことが判明しています。ただ、頭蓋骨の形状から考えて、ゲニオルニスは新芽や新鮮な果実など、繊維の少ない柔らかい植物を好んで食べていた。鼻孔や耳の位置関係から察するに、頭を水に突っ込む際に水が入るのを防いでいたことから、水辺周辺で暮らし、つま先が広く短く、爪はひづめのような形をしている水陸両用だったことがわかりました」(恐竜研究家)
では、いったい何が原因で絶滅したのか。研究チームによれば、絶滅した3万5000年前はちょうど現生人類の先祖となるクロマニョン人の出現と重なるため、
「むろん気候変動によって滅びた可能性は捨てきれませんが、コトによっては人類に狩猟・捕獲され、食料になったかもしれない。というのも、オーストラリアにおける大型動物絶滅は、人類の活動に起因することが多い、との論文が多いのです。つまり、人類が彼らを餌にしていたとも考えられる。ゲニオルニスを食い尽くしたのは人類だった可能性が否定できません」(前出・恐竜研究家)
まさに食うか食われるかの弱肉強食時代、飛べない鳥を絶滅させたのは気候変動でも肉食恐竜でもなく、人類だったのかもしれない。
(ジョン・ドゥ)