おそらく、その見たこともないような頭蓋骨を目にした少女は、たいそう驚愕したに違いない。
1930年代、メキシコのチワワ州の村に住む少女が、村の洞窟で人骨を発見した。掘り起こしてみると、一体は成人女性と思われるものだったが、もう一体は、まるでグレイ型エイリアンのような、大きな頭蓋骨を持つ小さな子供の骨だった。
その後、アメリカ人男性の手に渡ったこの頭蓋骨は1999年、解剖学者ロイド・パイ博士のもとで研究され、900年以上前の5~6歳の男児のものであることが判明。ただ、一般的に人間の脳が収められている頭蓋骨とは、明らかな違いがあった。
通常、成人の脳の平均容積は1400ccほどだが、この子供と思われる脳の容積は1600cc。このまま成長していれば、成人時には容積が1800~2000ccに達している、との結果が出たのだ。
さらには、この頭蓋骨は一般的なそれよりも非常に強く、骨を溶解するためEDTA(エチレンジアミン四酢酸)に浸した際も、通常なら1~2週間程度で溶解できるのに対し、この骨は10週間を経過してもなお溶解できなかったという。
「最終的には通常より数倍強い液を用いて溶解したのですが、見た目だけでなく、骨自体の構造も極めて奇異だったということです」(サイエンスライター)
さらに、頭蓋骨が発掘された地域にはかねてから、天から来た謎の生物と、現地の女性の間に子供が生まれる、という伝説があることから、パイ博士は、この子供は伝説の星から来た、つまりは宇宙人と地球人のハイブリッドだとして、「スターチャイルド」と名付けたのである。
博士の研究はその後も続けられ、2004年に行われたDNA調査で、男児はともに出土した女性と親子関係にあったことが判明した。
「しかし、肝心の父親側の遺伝部分はどんな方法を用いても回復することができず、宇宙人と地球人とのハイブリッド説がさらに信憑性を帯びる結果となりました」(前出・サイエンスライター)
むろん、これに異論を唱える科学者や人類学者は多い。古来より中南米では特別な地位に生まれた人物は幼少時に頭骨を変形させる、という文化がある。そこで、水頭症に近い奇形として生まれた乳児を神格化するため、その頭蓋を布で絞めるなどしてより変形させる『頭蓋変形』を、成長に合わせて行ったのではないか、との説もある。
現在もなお、父方のDNAは検出できておらず、父親が何者なのかは不明だ。「ハイブリッド×神格化儀式」論争の着地点はまだ見えない。
(ジョン・ドゥ)