オーストラリアのクイーンズランド州イーミュー・パークンに住む男性が、同州ケッペル・サンズのビーチで撮影した、ある生き物の死骸をFacebookにアップしたところ、米ニュースメディア「Knewz」などが取り上げたことで「これは人魚のミイラ発見か!」と地元を揺るがす事態になっている。
砂浜の上に横たわる死骸は体長約6フィート(約183センチ)で、大半が白骨化。魚に見える下半身に、肋骨がある上半身、その先には確かに、人間の頭蓋骨のようなものがある。サイエンスライターが言う。
「写真を確認した英ロンドン動物学会の専門家は、小型のクジラ科のものではないか、としたものの『このエリアにどんな生物がいるかわからないため、それ以上のことは答えられない』と明言を避けました。専門家でもわからない謎の生物の死骸として、人魚伝説に火が付いたというわけなんです」
実は日本でも今年2月に「人魚のミイラ」と称されるものが、倉敷芸術科学大などの科学的調査で、その正体が判明している。前出のサイエンスライターが解説する。
「倉敷芸術科学大のCT(コンピューター断層撮影法)により調査されたのは、倉敷市の円珠院に保管されていた、サルのような頭部に歯と頭髪を持ち、両手に爪、下半身にウロコや尾ビレがある、体長約30センチのミイラです。このミイラが寺に安置された経緯はわかりませんが、添えられた文書には明治36年(1903年)11月という日付がある。江戸中期に高知沖の漁網にかかった奇代乃魚、つまり『世にも珍しい魚』として大阪で売られた、との記述があることから、地域の貴重な遺産として住民から愛されてきたそうです」
しかし最新の研究により、このミイラの上半身は、綿の詰め物の上にフグの皮がかぶせられていることがわかった。下半身も「ニベ」という魚のヒレとウロコを残したまま骨や肉を取り除き、布や綿が詰められていると判明している。
「さらに電子顕微鏡による観察で、頭部には哺乳類特有のたんぱく質が見られた。動物の毛を貼り付けたものであり、爪も人間やサルなど霊長類のものである可能性が高い、との結果が出ました。ウロコの測定結果から、作られたのはおそらく1800年代後半。つまりこのミイラに関して言えば、魚や綿などで成形した工作品だったわけですが、住職は『人魚のものではなかったが、命ある生き物を使っていたことは確か。大切に保管し、作った人や現代まで守ってきた人の思いを伝えていきたい』と語っています」(前出・サイエンスライター)
さて、クイーンズランドで見つかった死骸は人魚なのか、はたまた…。
(ジョン・ドゥ)