インバウンド客で賑わう現在、とりわけ京都のオーバーツーリズムが問題視されているが、お隣の大阪も負けていない。今年5月に大阪観光局が発表したところによると、大阪を訪れる外国人客数は1400万人に達する見通しだ。これが実現すれば、コロナ禍前の2019年を14%上回り、5年ぶりに過去最高を更新することとなる。
外国人をはじめとする旅行者に人気があるのは、通天閣や黒門市場などがある難波駅付近、いわゆる「ミナミ」エリアだ。しかし最近では、JR大阪駅や梅田駅などがある「キタ」エリアに移ってきていると、地元住民は言う。
「特に週末になると、JR大阪駅周辺はまっすぐ歩くことさえ困難になる。人が多すぎてスーツケースを引けないため、手に持って移動する旅行者をよく見かけますが、それがぶつかって危うくケガしそうになることもありますね」
大阪駅は大阪中の路線が乗り入れる中心地であり、新幹線が通っている新大阪駅まで一駅の距離にあるため、新幹線で移動する旅行者も多く行き来している。別の大阪市民の女性からは以下のような苦情が飛び出した。
「大阪駅周辺のデパートやショッピングモールには飲食店が多く入っていますが、週末になるとどのレストランも常に満席です。家族と出かけて外でランチを食べようとすると、1時間以上も待つことがありますね。だから地元の人はファミレスやチェーン店のカフェで食事を済ませようと考えるのですが、それでも20人くらい待っていることがあって驚きました。ショッピングモール以外にも飲食店はありますが、雑居ビルの中で階段しか使えないお店ばかりなので、スーツケースを持った旅行者や子連れの人たちからすると不便ですよね」
こうした大阪駅周辺の混雑について、地元の旅行雑誌編集者は次のように指摘する。
「JRや阪神を含む大阪の地下街があまりにも複雑すぎて、旅行者が使いこなせないことが問題だと思います。大阪駅周辺の地下街は『梅田ダンジョン』と呼ばれるほど、飲食店から地下のテナントまでが入り組んでいて、旅行者には非常に難解です。だから旅行者は地上に出て歩くのですが、大阪駅周辺は横断歩道が少ないため、こうしたオーバーツーリズムの現象が起きてしまうのでしょう」
これから万博に向けてさらなる旅行者が見込まれる大阪。府は外国人観光客を対象にした「徴収金」構想を検討しているが、その前に大阪駅周辺の旅行者向け街案内を整備するべきではないか。
(カワノアユミ)