日本テレビのドラマへの信用度は、さらに落ちていくばかりかもしれない。
7月22日、同局のドラマ「セクシー田中さん」の原作者・芦原妃名子さんが急逝した一連の問題について、社内特別調査チームによる調査報告書を踏まえた「日本テレビドラマ制作における指針」を公表したのだが、この指針が物議を醸しているのだ。
芦原さん原作の同名漫画が木南晴夏の主演でドラマ化されたのは、昨年10月だった。ところが今年1月、ドラマ制作前に確認した「必ず漫画に忠実に制作する」という約束を反故にされた芦原さんは、大きく改変された脚本での放送があったとして、協議の結果、9話と10話は芦原さん自身が脚本を担当することになったと告白。芦原さんの死が報じられたのは、その後のことだった。
日本テレビの怠慢とも思える原作への冒涜に、同局が非難に晒されたのは周知の事実だが、では新たなドラマ制作の指針はどうなのか。
そこには「特に、漫画や小説などを原作として映像化する際には、原作を尊重し、その世界観をより深く理解するよう努めます」という宣言文があった。さらには「その上で、原作者と対面またはオンラインで直接会話するなどして、丁寧に時間をかけてコミュニケーションを取るよう努め、ドラマ制作にあたっての方向性や具体的な表現手法に関する相互理解を深めます」とも。改善を模索していくと記されていたのだ。
だが、これを知った視聴者は、すぐに納得しない。「形だけじゃないといいですね」「犠牲者が出ないとこんな当たり前のことも守られないのか」「日テレの言うことやること信用できない」といった具合に…。制作現場からは、こんな悲壮な声が聞こえてきている。
「日テレのドラマはただでさえ制作力が落ちているのに、こうした歯の浮くような弁明は視聴者だけでなく、俳優を多く抱えるプロダクションからの心証も悪くする。当然、売り出したい新人や、数字が見込めそうな役者は、日テレのドラマをスルーしてしまうのではないか、という懸念が生まれます。そしてこの指針は、ドラマスタッフの首を絞めることになりかねません。もちろん原作が大事であることは大前提ですが、テレビサイズにする場合、ある程度の脚色や変更は必要となってきます。これに関して、さらに緊密なやり取りを活発化する一方で、制作側が原作者に過剰な配慮をしてしまい、全く原作通りに描くとなると、ドラマとしてのダイナミズムが失われてしまうことがあるのです」
ドラマが作りづらい状況に、自らを導いてしまったのか…。
(宇治田博恭)