戦後最大の清純派スターにして大女優の吉永小百合。そのイメージはもはや神格化された次元に達している。そこに、「本当の小百合」を取り戻してほしいと、旧知の作家が一石を投じ、生い立ちから男性遍歴までを激白。その辛口エールは「サユリスト」の幻想を打ち破る、愛欲エピソードにあふれていた。
「そもそも発売前から『(出版は)おやめになったほうがいいですよ』という“警告”もありまして。男性遍歴など、昔の“古傷”には触れられたくないんじゃないですか‥‥」
静かにこう語るのは、作家・中平まみ氏。9月に吉永小百合(66)の「真実」をつづった著書「小百合ちゃん」(講談社)を上梓した際のことである。
中平氏は吉永主演の「泥だらけの純情」(63年・日活)や「光る海」(63年・日活)などを撮った映画監督・中平康氏(故人)の愛娘。吉永とは若い頃から公私ともに深い交流がある友人同士であり、かつてファンクラブ会員でもあった熱烈な「サユリスト」だ。
デビューから現在に至る「女優・吉永小百合」をつぶさに記したこの著書には当然のことながら、彼女のターニングポイントとなった「事件」、すなわち男性関係も詳細に描かれている。
いったい、吉永サイドが“警告”をしたほどの内容とはどんなものなのか。
まず登場するのは、中尾彬(69)との密会だ。著書には、本誌75年9月18日号の、中尾のインタビューが抜粋されている。
早稲田大学に通っていた吉永の車に乗り込み、一緒に行動した中尾。
〈ある日、やはり早稲田からの帰りだったと思うけど、彼女、僕の膝を枕にして眠っちゃったんだ。その時も運転手さんは車を静かなところへ停めて、席を外してくれたんだよ。やろうと思えばカーセックスでも可能な状況に置かれたわけだけど、僕は何もしなかったんだから、われながらバカだと思うね。ところが、寝顔を覗き込んでいる僕の頭に、彼女の両腕がすーっと伸びてきて、引き寄せられちゃったんだ〉
そして、「血染めのラブレター」事件へと話は移る。
〈オランダロケに彼女が行った時、ナイフか何かで指を切ったんですよ。流れる血を見ているうちに、それで手紙を書きたくなったから、血で書いたというんだよ。(中略)おセンチな少女の発想ですよ。それでも、僕には可愛くってしょうがなかったね〉
吉永に何度もインタビュー経験のあるベテランのジャーナリストは言う。
「“恋文”を送ったものの、実は彼女は中尾のことがそれほど好きだったわけではなかった。中尾からはずいぶん言い寄られたが、“ソノ気”は全然なかったそうです」
その中尾から吉永を引き離したのが、当時はまったくの駆け出しだった、あの大俳優だった。
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