芸能

吉永小百合、言葉の端々に感じる「女優魂」

 最新作には「東映創立60周年記念作品」の肩書きがついている。大女優にふさわしい盛りつけであるが、実は「50周年記念作品」もまた、吉永の主演だった。助演に天海祐希、常盤貴子、高島礼子、松田聖子ら豪華な女優陣をしたがえた歴史絵巻「千年の恋 ひかる源氏物語」(01年/東映)である。

 ここで吉永は、物語の語り部たる紫式部に扮した。脚本は「夢千代日記」(81年〜/NHK)などで吉永の信頼も厚い早坂暁だが、監督は初めての顔合わせとなる堀川とんこうである。堀川を指名したのは、現在の東映社長で、かつて俳優だった時代にドラマで起用したことがある岡田裕介だったと言う。

「TBSでやったドラマが、結構おもしろかったという印象が彼の中にあったようだ。ただ、吉永さんとは仕事をしたことがなかったので『どうして僕を?』と岡田に聞いたら、『あんた、スケベだから』と言うんだね」

 真意はこうである。東映の京都撮影所に豪華な女優たちが次々とやって来て、それぞれに濃厚な濡れ場をこなしてゆく。こうした女優たちの“さばき方”に長けているのは堀川だろうという岡田の判断だった。

 堀川は引き受けはしたものの、やはり手ごわい女優たちだと思った。光源氏に扮した天海祐希に、次々と抱かれる設定なのである。早坂暁の卓越した脚本があればこそ乗り切ることができたと苦笑する。

「ただし、主演の吉永さんは『語り部』であるので、こうした情熱的な女優たちとは一線を画している。藤原道長に扮した渡辺謙との恋はあるが、あくまでプラトニック。そのため、静かな集中力を現場でも維持していた。セットに入る時間も早かったし、自分なりの芝居をいろいろ考えていましたね。私のプランとも大きな違いはなかったです」

 芝居は的確で、シナリオも熟読している。堀川は、その真摯な姿が吉永小百合の美点であり、また欠点ではないかと思えた。

 岡田社長からの指名がなければ、もともと「傷のあるリンゴのような女優」が好きな堀川にとって、吉永が持つ清潔感は無縁のはずだった。そんな印象が変わったのは、クランクインを前に何度か会話してのことだった。

「表には出さないけど、実は言葉の端々に“女優魂”が眠っていると感じたんですよ。ああ、こういう人だったのかと印象を新たにしました」

 吉永は堀川に対し、1つだけ注文をする。それは撮影の前に1本の映画を観ておいてほしいと─。吉永が選んだのは、2000年に日本でも公開された「ダンサー・イン・ザ・ダーク」( デンマーク) だった。人気歌手のビョークが主演で、失明の危機とともに運命を流転するシングルマザー役を烈しく演じた。

「なぜ、あの映画を観てほしいと言ったのか、今もわからないまま。吉永さんの中には、あの主人公をどこかで紫式部に重ね合わせていたのか‥‥答えは教えてくれませんでしたが」

 豪華な女優たちと芝居上のからみはなく、また女優たちの衣装や芝居の一切を意識することなく、静かな集中力のままに撮り終えていたという。

カテゴリー: 芸能   タグ: ,   この投稿のパーマリンク

SPECIAL

アサ芸チョイス:

    なぜここまで差がついた!? V6・井ノ原快彦がTOKIO・国分太一に下剋上!

    33788

    昨年末のスポーツニュース番組「すぽると!」(フジテレビ系)降板に続いて、朝の情報番組「いっぷく!」(TBS系)も打ち切り決定となったTOKIOの国分太一。今月30日からは同枠で「白熱ライブ ビビット」の総合司会を務めることになり、心機一転再…

    カテゴリー: 芸能|タグ: , , , , |

    医者のはなしがよくわかる“診察室のツボ”<寒暖差アレルギー>花粉症との違いは?自律神経の乱れが原因

    332686

    風邪でもないのに、くしゃみ、鼻水が出る‥‥それは花粉症ではなく「寒暖差アレルギー」かもしれない。これは約7度以上の気温差が刺激となって引き起こされるアレルギー症状。「アレルギー」の名は付くが、花粉やハウスダスト、食品など特定のアレルゲンが引…

    カテゴリー: 社会|タグ: , , , , , |

    医者のはなしがよくわかる“診察室のツボ”<花粉症>効果が出るのは1~2週間後 早めにステロイド点鼻薬を!

    332096

    花粉の季節が近づいてきた。今年のスギ・ヒノキ花粉の飛散量は全国的に要注意レベルとなることが予測されている。「花粉症」は、花粉の飛散が本格的に始まる前に対策を打ち、症状の緩和に努めることがポイントだ。というのも、薬の効果が出始めるまでには一定…

    カテゴリー: 社会|タグ: , , , , |

注目キーワード

人気記事

1
上原浩治の言う通りだった!「佐々木朗希メジャーではダメ」な大荒れ投球と降板後の態度
2
【高校野球】全国制覇直後に解任された習志野高校監督の「口の悪さ」/スポーツ界を揺るがせた「あの大問題発言」
3
エスコンフィールドに「駐車場確保が無理すぎる」新たな問題発覚!試合以外のイベントでも恨み節
4
「子供じゃないんだから」佐々木朗希が米マスコミに叩かれ始めた「温室育ち」のツケ
5
ミャンマー震源から1000キロのバンコクで「高層ビル倒壊」どのタワマンが崩れるかは運次第という「長周期地震動」