時代の流れとともにすたれていくもの、形を変えて生き残るもの、全く新しい展開を模索するもの…我々の前には様々な商売の生き残り合戦が展開されている。デパートもそのひとつであり、象徴的なのは池袋西武をめぐる大騒動だった。(2024年7月11日配信)
昨年夏に従業員のストライキ騒動があった池袋西武百貨店の「デパ地下」、西武食品館が7月末でいったん営業を終了。
5月にスポーツ用品売り場、6月末にデパート屋上の老舗讃岐うどん店、7月7日には子供服おもちゃ売り場がひっそりと営業を終了しており、食品館と婦人服売り場や紳士服売り場、リビング用品売り場も7月末までに順次、閉幕に。
振り返れば、2022年は百貨店受難の年だった。新宿の小田急百貨店本店が新宿西口再開発と高層ビルへの建て替えで閉店。渋谷ではマルイが閉店、東急百貨店本店は2023年1月末での営業終了を発表した。
そして年末に飛び込んできたのが、池袋西武の親会社、セブン&アイ・ホールディングスがアメリカの投資ファンド「フォートレス・インベストメント・グループ」に、そごう・西武の全株式を売却する、というニュースだった。
営業最終日の7月7日に池袋西武の子供服おもちゃ売り場を訪れたが、小田急や東急本店の閉店セールとは明らかに雰囲気が違う。小田急や東急の閉店セールでは、長谷川町子が描いた「サザエさん」の昭和のバーゲンセールを思い出させる、セール品の争奪戦が見られた。
海外からの輸入おもちゃを扱るボーネルンド社のカラフルなディスプレイがフロアのアイキャッチになっていた子供服おもちゃ売り場は、当日の都知事選の影響があったのか、1000円でお釣りがくるお買い得品のワゴンに集まる子供連れで賑わいながらも、どこか寂しげ。
すでに営業終了した空きテナントも多く、フロア全体がモノトーンに沈む光景は、百貨店業界3位の売り上げを誇る池袋西武ですら苦境を露呈しているようで、心が苦しくなった。
2025年1月にリニューアルオープン、夏にはグランドオープンする池袋西武の今後の営業方針は、ハッキリしている。売り場面積はリニューアル前の約2分の1に縮小。海外ブランド品とアパレル、高級コスメ、食料品に特化した営業形態になるという。
昨年8月の従業員ストライキを煽り、ヨドバシカメラ参入をボロクソに批判していたオールドメディアの読者や自称セゾン文化人、懐古趣味の中高年は、屋上やランドマークの光の時計で記念写真を撮って帰るだけ。何の儲けにもならない日本人中高年に媚びる義理はないが、外国人観光客のインバウンドに特化するしか、これからの百貨店に生き残る道はないのだろうか。
なお、西武食品館の営業終了後も、ルイ・ヴィトンとエルメス、ティファニー、コスメ売り場、ロフトなどが入る本館南棟、地下の一部エリア、レストラン街は引き続き営業している。来店しただけでワクワクした昭和のレトロ百貨店の面影は、8階レストラン街にかろうじて残りそうだ。
(那須優子)