社会

「デパ地下」も静かに終了…池袋西武が象徴する「インバウンドに特化」デパートの苦境と未来

 昨年夏に従業員のストライキ騒動があった池袋西武百貨店の「デパ地下」、西武食品館が7月末でいったん営業終了するのをご存じだろうか。

 5月にスポーツ用品売り場、6月末にデパート屋上の老舗讃岐うどん店、7月7日には子供服おもちゃ売り場がひっそりと営業を終了しており、食品館と婦人服売り場や紳士服売り場、リビング用品売り場も7月末までに順次、営業を終了する。

 振り返れば、2022年は百貨店受難の年だった。新宿の小田急百貨店本店が新宿西口再開発と高層ビルへの建て替えで閉店。渋谷ではマルイが閉店、東急百貨店本店は2023年1月末での営業終了を発表した。

 そして年末に飛び込んできたのが、池袋西武の親会社、セブン&アイ・ホールディングスがアメリカの投資ファンド「フォートレス・インベストメント・グループ」に、そごう・西武の全株式を売却する、というニュースだった。

 営業最終日の7月7日に池袋西武の子供服おもちゃ売り場を訪れたが、小田急や東急本店の閉店セールとは明らかに雰囲気が違う。小田急や東急の閉店セールでは、長谷川町子が描いた「サザエさん」の昭和のバーゲンセールを思い出させる、セール品の争奪戦が見られた。

 海外からの輸入おもちゃを扱るボーネルンド社のカラフルなディスプレイがフロアのアイキャッチになっていた子供服おもちゃ売り場は、当日の都知事選の影響があったのか、1000円でお釣りがくるお買い得品のワゴンに集まる子供連れで賑わいながらも、どこか寂しげ。

 すでに営業終了した空きテナントも多く、フロア全体がモノトーンに沈む光景は、百貨店業界3位の売り上げを誇る池袋西武ですら苦境を露呈しているようで、心が苦しくなった。

 2025年1月にリニューアルオープン、夏にはグランドオープンする池袋西武の今後の営業方針は、ハッキリしている。売り場面積はリニューアル前の約2分の1に縮小。海外ブランド品とアパレル、高級コスメ、食料品に特化した営業形態になるという。

 昨年8月の従業員ストライキを煽り、ヨドバシカメラ参入をボロクソに批判していたオールドメディアの読者や自称セゾン文化人、懐古趣味の中高年は、屋上やランドマークの光の時計で記念写真を撮って帰るだけ。何の儲けにもならない日本人中高年に媚びる義理はないが、外国人観光客のインバウンドに特化するしか、これからの百貨店に生き残る道はないのだろうか。

 なお、西武食品館の営業終了後も、ルイ・ヴィトンとエルメス、ティファニー、コスメ売り場、ロフトなどが入る本館南棟、地下の一部エリア、レストラン街は引き続き営業している。来店しただけでワクワクした昭和のレトロ百貨店の面影は、8階レストラン街にかろうじて残りそうだ。

(那須優子)

カテゴリー: 社会   タグ: ,   この投稿のパーマリンク

SPECIAL

アサ芸チョイス:

    デキる既婚者は使ってる「Cuddle(カドル)-既婚者専用マッチングアプリ」で異性の相談相手をつくるワザ

    Sponsored

    30〜40代、既婚。会社でも肩書が付き、責任のある仕事を担うようになった。周囲からは「落ち着いた」なんて言われる年頃だが、順調に見える既婚者ほど、仕事のプレッシャーや人間関係のストレスを感じながら、発散の場がないまま毎日を過ごしてはいないだ…

    カテゴリー: 特集|タグ: , |

    これから人気急上昇する旅行先は「カンボジア・シェムリアップ」コスパ抜群の現地事情

    2025年の旅行者の動向を予測した「トラベルトレンドレポート2025」を、世界の航空券やホテルなどを比較検索するスカイスキャナージャパン(東京都港区)が発表した。同社が保有する膨大な検索データと、日本人1000人を含む世界2万人を対象にした…

    カテゴリー: 社会|タグ: , , , |

    コレクター急増で価格高騰「セ・パ12球団プロ野球トミカ」は「つば九郎」が希少だった

    大谷翔平が「40-40」の偉業を達成してから、しばらくが経ちました。メジャーリーグで1シーズン中に40本塁打、40盗塁を達成したのは史上5人目の快挙とのこと、特に野球に詳しくない私のような人間でも、凄いことだというのはわかります。ところで、…

    カテゴリー: エンタメ|タグ: , , |

注目キーワード

人気記事

1
長与千種がカミングアウト「恋愛禁止」を破ったクラッシュ・ギャルズ時代「夜のリング外試合」の相手
2
暴投王・藤浪晋太郎「もうメジャーも日本も難しい」窮地で「バウアーのようにメキシコへ行け」
3
日本と同じ「ずんぐり体型」アルプス山脈地帯に潜む「ヨーロッパ版ツチノコ」は猛毒を吐く
4
侍ジャパン「プレミア12」で際立った広島・坂倉将吾とロッテ・佐藤都志也「決定的な捕手力の差」
5
怒り爆発の高木豊「愚の骨頂!クライマックスなんかもうやめろ!」高田繁に猛反論