9月の自民党総裁選をニラみ、地方行脚を続けている高市早苗経済安全保障担当相だが、立候補できるか、いまだ見通しは立っていない。総裁選出馬には国会議員20人の推薦が必要ながら、その20人を確保できていないためだ。しかも中堅・若手議員からは小林鷹之前経済安全保障担当相を推す動きが出ており、自民党内の保守系票が分散する可能性がある。
高市氏は2021年の総裁選で党員票の獲得に苦労した反省から、地方行脚に力を入れてきた。7月には東京、宮城、沖縄などで講演したが、どこの会場にも多くの人たちが詰めかけ、「高市人気」の高さを示している。8月15日の終戦の日には、評論家の金美齢氏らと「8月15日に国家を考える集い」を開催する。
高市氏は正式な出馬表明をしていないが、総裁選まで1カ月と迫る中、この会合を事実上の「決起大会」としたい考えとみられる。
これだけ多くの来場者があれば、各地の党所属議員らも便乗して参加しようとするものだが、問題は議員らへの広がりがないことだ。ある保守系議員は、こう証言する。
「高市さんが作家の門田隆将さんと二人三脚で講演活動しているのが問題で、広がりがない」
これに対し、門田氏は8月3日の兵庫県姫路市での集会後、自身のXに投稿。
〈岩盤の保守・現実派と無党派保守層が高市氏以外では戻らない。その事を未だ分からない議員がいる事に驚かされる〉
先の保守系議員は、
「仮に高市さんが出馬できないとなると、門田さんらの矛先は自民党の国会議員に向かうだろうね。2021年1月6日にトランプ支持者が連邦議会議事堂を襲撃したように、高市支持者が永田町の自民党本部に抗議活動を行うかもしれない。そうなると、せっかく党の再建に向けた機運を高めるための総裁選が、逆効果になってしまう」
そんな懸念をあらわにするのだった。
(田中紘二/政治ジャーナリスト)