ソフトバンクの本拠地・福岡ヤフオクドームに今季から「ホームランテラス」というフィールドシートが設置されることになりました。右中間、左中間がホームから最大で約5メートル短くなり、フェンスも低くなります。「ホームランをもっと見たい」という孫正義オーナーの号令で、改修に乗り出したということです。
12年オフには楽天の本拠地のコボスタ宮城もフェンスを前にせり出し、客席を設置しました。球場の適度な「縮小化の流れ」には賛成です。やはりホームランというのは「野球の華」ですから。
日本では80年以降に造られた球場は「拡大路線の流れ」で造られました。MLBの本拠地にも負けない広いグラウンドとなり、日本のプロ野球は外野の守備と走塁面が飛躍的に進化したのです。
広い球場は大きな恩恵をもたらしましたが、中にはあまりにもホームランが出にくい球場もあります。11年に統一球が導入されるまでは、各球団がボールの性能で調整することも可能でしたが、今は反発係数が定められています。飛びすぎる、飛ばなすぎるなどと、ひと騒動あった統一球問題も落ち着きました。プロ野球人気回復のため、球場のコンセプトを見直してもいい時期が来たのではないでしょうか。
私は甲子園も91年のシーズンまで採用されたラッキーゾーンの復活を検討するべきだと思っています。14年の1試合当たりのホームラン数は1.05本で、12球団の本拠地ではナゴヤドームに次ぐ低さでした。確かに1-0で決着するような試合は緊張感がありますが、投手戦というより、貧打戦と言えるケースも多いのです。今は甲子園のゲームで3点差がワンチャンスと思えないのです。ホームランなしの連打だけで3点はなかなか奪えません。ファンが目を離せない試合を増やし、ドラマが起きる確率を高めたほうがいいのではないでしょうか。
甲子園の場合は、特に左打者にホームランが出にくい環境です。右翼から左翼への逆風となる強い「浜風」のせいです。私も現役時代に会心の一撃が風に押し戻されるのを嫌というほど経験しましたが、本当に左打者泣かせの球場です。例えば巨人・阿部の甲子園での本塁打数を調べると、昨季は0本で、過去5年で見ても55試合で4本しか打てていません。東京ドームなら看板直撃の当たりでさえ、スタンドまで届かないことがあるのです。この理不尽さを解消するため、右翼側だけにラッキーゾーンを復活しても、おもしろいと思います。
アメリカではむしろ左右非対称の球場のほうが一般的で、レッドソックスの本拠地フェンウェイ・パークは特に有名です。左翼にだけグリーンモンスターと呼ばれる高い壁(約11.3メートル)がそびえ立ちます。日本でも09年に開場したマツダスタジアムは左翼101メートル、右翼100メートルと左右非対称で、スタンドもメジャー風にくふうを凝らし、最近のカープ人気に一役買っています。甲子園も左右対称にこだわらなくてもいいのではないでしょうか。
ラッキーゾーンを撤去した92年以降、阪神で30本塁打以上をマークしたのは金本だけです。生え抜き選手では、私と岡田がともに記録した85年まで遡らないといません。甲子園は高校野球の聖地でもあり、高野連とも話し合う必要があるなど難しい面があるのもわかります。ただ、ファンがときめく新しいスターを作るためにも、真剣に検討したい問題です。