連日、全国各地で「熱中症警戒アラート」が発令されている日本酷暑列島。熱中症は体内に熱がこもることで発症する急性疾患だが、重症化すると死に至るケースが少なくない。
総務省消防庁の集計によれば、熱中症による救急搬送者数(全国)は2週連続(直近)で1万人を突破。また、東京都監察医務院の調べによれば、今年7月に東京23区内で確認された熱中症死者数は123人と、6年ぶりに100人の大台を超えた。
だが、その熱中症より恐ろしいとされる「熱中症後遺症」の実態はあまり知られておらず、警戒アラートの盲点となっている。
熱中症後遺症は熱中症(主に高体温や脱水など)によって引き起こされる慢性疾患であり、「めまいや頭痛に悩まされる」「記憶力が落ちる」「感情を制御できない」「物を飲み込めない」「歩くことが難しくなる」などの症状が発現する。しかもこれらの症状は数週間から数年、場合によっては一生続くというから、なんとも恐ろしい。
中でも警戒を要するとされているのが「脳」と「腎臓」へのダメージである。
脳は熱に弱く、熱中症による高体温が続くと、脳細胞が次々と死滅していく。いったん死滅した脳細胞は再生されないため、記憶力や判断力の低下、麻痺、嚥下障害、歩行障害といった重篤な脳機能障害に陥ってしまうのだ。
また、熱中症による脱水状態が続くと、体内の水分不足で尿が出にくくなり、腎臓に毒素が蓄積されていく。その結果、腎臓が機能不全に陥り、重篤な場合は一生涯、人工透析が必要になるケースもあるというのだ。
熱中症の深刻度は軽度⇒中等度⇒重度の3段階で評価されるが、深刻度が増すほど、熱中症後遺症の発現率は高くなるとされている。
ただし、最も症状が軽い軽度熱中症でも後遺症を発症したケースが報告されているほか、熱中症にかかった患者の約8割で後遺症が確認されている、との驚くべき指摘がある。
熱中症を甘く見てはいけないということだ。
(石森巌)