65歳以上の3人に1人が認知症とその予備軍と言われている(2015年1月、厚生労働省発表)。その予防として、あん肝やいくらに注目が集まっているという。
江田クリニック・江田正院長が解説する。
「いろいろな原因で脳の細胞が死んでしまったり、働きが悪くなったりしたためにさまざまな障害が起こり、生活するうえで支障が出ている状態のことを認知症といい、妄想を抱いたり、幻覚を見る、暴力をふるう、徘徊をするなどの症状が現れます」
原因はさまざま挙げられているが、アメリカ・ラトガース大学環境・生物科学大学院では、さまざまな民族を含む高齢者を対象とした研究(ジョシュア・W・ミラー教授ら)が行われ、ビタミンDの不足と認知機能低下の促進との間に関連が認められたと、米国医師会神経学専門誌「JAMA Neurology」(電子版)に報告された。
ビタミンDはカルシウムやリンなど、ミネラルの代謝や恒常性の維持、骨の代謝に関係しており、不足すると骨粗鬆症になりやすいとされていた。ジョシュア・W・ミラー教授らは白人、黒人、ヒスパニックの認知症の高齢者382人(平均年齢75.5歳)の活性型ビタミンDを測定した結果、6割以上がビタミンD不足だったというのだ。
「暑い夏の日に、海岸で15分間の日光浴をすれば、ビタミンDは十分に合成されます」
と、薬剤師の濱谷太郎氏は言うが、なかなかそれだけの陽に当たれない人も多い。代わりになるのは、ビタミンDを多く含む食べ物。管理栄養士の原久江氏はこう語る。
「ビタミンDは魚に多く含まれます。あん肝、しらす干し(半乾燥)、いわし(丸干)、身欠きにしん、すじこ、イクラなどに、特に多く含まれているのです」
今の時期に美味しいあん肝は、群を抜いて含有量が多い。「あん肝で一杯」が認知症の予防に寄与するなら、いうことはないのだが、サプリの場合は摂りすぎがち。摂りすぎると高カルシウム血症、腎機能障害を引き起こす可能性もあるので、要注意である。
(谷川渓)