メディアの世論調査では「次の総理大臣」として、常に上位に名前が挙がる自民党の石破茂氏だが、岸田文雄総理の総裁選への不出馬表明を受けて、8月14日に訪問先の台北で、
「総裁選に推してやろうという方々が20人おられれば出馬したい」
と明言した。いまだに立候補に必要な推薦人20人を集めていないことを自ら認めてしまった形だ。
FNNの世論調査「次の総理にふさわしい人」では、石破氏がトップで24.7%と、2位の小泉進次郎元環境相の12.1%、3位の高市早苗経済安全保障担当相の7.5%を大きく引き離している。
元NHK記者でジャーナリストの岩田明子氏は、石破氏が党内で不人気な理由について、次のように説明した。
「支える人たちが最初、派閥でいましたけれども、1人ずつ抜けていったことから分かるように、人間関係で引き付けておくための包容力というか面倒見の良さ、そういうところなのかなと思う」
石破氏は自身に近い議員らと「水月会」というグループを結成したが、次々と議員が退会した。有力メンバーだった斎藤健経産相もそのひとりだ。斎藤氏は今回、石破氏を推すどころか、自身が総裁選への出馬に意欲を示している。
そんな「裏切り者」もいる石破氏は「日本の安全保障を考える超党派議員」の代表として訪台したが、さる自民党の閣僚経験者が言うには、
「総裁選前ならば超党派ではなく、自民党の中堅・若手議員を引き連れて行くべきだった。それができないのは岩田さんが指摘するように、包容力のなさ、面倒見の悪さが原因だ」
いくら世論調査で上位にいても、立候補に必要な推薦人20人の壁が石破氏にはある。政権批判では歯切れがいい石破氏だが、自身の対応については「出馬する」とは断言できなかった。
その後、石破氏は「メドはつきつつある」と語っているが、前回2021年の総裁選でも出馬断念に追い込まれたように、今回もスタート台に立てるか、最後まで予断を許さない状況が「人気者」を取り巻いている。
(田中紘二/政治ジャーナリスト)