これも「南海トラフ津波臨時情報」と「台風7号」の余波だろう。台風接近と老齢年金の支給日「15日」が重なったこともあり、8月15日には首都圏のスーパーから完全に「コメ」が消えた。
毎年、コメの消費量が低下し、ただでさえ生産量が落ちていたところに、昨年の猛暑による不作が重なった。農林水産省が6月に発表したコメの在庫量は、1999年以降で過去最低の156万トンだった。
10キロで5000円から7000円、2キロでも2000円超えと高値をつける在庫不足に追い討ちをかけたのが、8月8日に発令された「南海トラフ津波臨時情報」。
防災備蓄用にコメを買い求める人達で、コメ売り場は「ほぼ売り切れ状態」となり、8月15日には台風7号の接近もあって、年金を引き出してきたばかりの高齢層の消費者がスーパーに殺到した。精米店を除けば、主要スーパーのコメ売り場は見事にカラになった。
通常であれば、早稲の品種のイネ収穫が始まるのはお盆休み明けの8月下旬で、9月上旬には新米が出回る。
首都圏に最も近い「早稲」のブランド米の大産地は、千葉県だ。もし台風7号で千葉県内の早稲の水田に甚大な被害が出ていたら、コメ不足はさらに長引くことになる。
コメだけではない。8月中に東北地方に台風が2つも接近した異常気象で心配されるのが、秋の味覚「サンマ」への影響だ。天気予報サイトのウエザーニュースは今年6月、インド洋など地球規模の海水温の変動に伴い、日本の南海上で発生する台風の数が平年より多くなる、との予測を出していた。
事実、台風7号が伊豆諸島に接近するにつれて「最強台風」に発達したのは、日本の南海上の海水温が30度超えの「ぬるま湯」状態だから。このまま海水温が下がらず、昨年のように黒潮の蛇行が続くようなら、今年の秋も秋刀魚の不漁が続くかもしれない。
筆者が行きつけの居酒屋の店長は、瀬戸内海の元漁師だった。新型コロナを機に廃業したのだが、台風7号接近のテレビニュースを見ながら、ポツリと寂しいことを呟いた。
「新型コロナで地元のホテルに魚を売れなくなって漁師を辞めたけど、異常気象が続いて魚がとれなくなって、南海トラフ地震も来るのなら、やっぱり潮時だったと思うしかないのかなぁ…」
新米も秋刀魚も食べられなくなる「食欲の秋」なんて考えられない。
(那須優子)