「夏の高校野球」のベスト8、準々決勝の4試合が行われている8月19日の甲子園球場。その第3試合「智弁学園×京都国際」で、野球ファンが思わずひと言モノ申したくなるシーンが展開された。
それは3-0と京都国際がリードする中、6回表の智弁学園の攻撃でのことだ。1死1塁、京都国際の先発左腕・西村一毅投手が投じた4球目、智弁学園の3番打者・山崎光留選手がはじき返した打球が西村投手の右足を直撃。打球は投手に当たったことでピッチャーゴロとなり、1塁ランナーこそ進塁したものの、智弁学園はチャンスを広げることができなかった。
しかし、打球が痛烈だったことで観客やテレビ視聴者は「大丈夫か?」となった。そこまで智弁打線を4安打無失点に抑えている西村投手のケガは心配だ。ところが、である。
ベンチから部員が走って来ると、打球の当たった西村投手の足に冷却スプレーをシュシュシューッと振りかけるとそれで終わり。西村投手は少し伸びるようにジャンプをすると、何事もなかったように次の打者への投球準備をした。
長年、野球を見ていれば「よくある光景」でスルーされるが、先日プロ野球で打球直撃騒動があっただけに、SNS上では皮肉めいたコメントが続出することに。その理由を野球記者が説明する。
「8月15日にエスコンフィールドで行われた『日本ハム×ロッテ』で、2回裏に佐々木朗希投手が足首付近に打球を受けて、たった16球で降板し物議を醸しました。首脳陣いわく、アキレス腱近くでその後のプレーで大事に至る可能性があるから総合的に判断したというわけです。しかし、ロッテにとっては2位争いで負けられない一戦でしたし、球団による過保護が問題視されている佐々木ということでプチ炎上しました。今回、京都国際の西村投手への打球直撃はまさに佐々木と同じパターンで、当たった箇所も近かった。ところが、佐々木のようにベンチに一旦下がることもなく、マウンドで冷却スプレーをシャーっと振りかけた程度で試合再開ですから『こんな程度で(治療は)本当はいいんだろ』『佐々木朗希なら120%交代案件』などと失笑を招いたわけです」
将来、メジャーでスーパースターになる予定の「日本の至宝」と、アマチュアの高校生を一緒にするな、という意見はあろう。結局、京都国際の西村投手は9回を投げ切り、118球の完封勝利(4-0)。チームをベスト4へと導いた。
「絶対に勝ちたい試合」へのモチベーションの違いと言ったら、佐々木には酷なのだろうか。
(北山陽向)