ラーメン店の倒産が急増している。東京商工リサーチの調べによれば、昨年度の倒産件数は前年度比173.9%増の63件と、過去最多を更新。倒産はミシュランガイドでも紹介された人気店にまで及んでいるという。
原因とされているのは、いわゆる「1000円の壁」だ。材料費や光熱費、人件費などの高騰が続く中、「1杯1000円以上では客足が減り、1000円未満では儲けが出ない」という悪循環から、廃業が相次いでいるというわけである。
しかし、原因はそれだけだろうか。筆者には、倒産ラッシュの裏に「長年にわたるラーメンブームで夜郎自大になっていった、業界のゴーマン体質」があるように思えてならないのだ。筆者も実際に、そんな光景を目の当たりにしたことがある。
ラーメン通の友人に誘われて、全国的に有名な超人気店を訪れた時のことだ。開店前だというのに、店の前にはすでに長蛇の列。30分以上も待って店内に入ると、メニューは醤油系の1種類のみ。しかも、ボリュームが半端ではなく、値段は1300円を超えていた。筆者が「食べ切れそうもないので、分量を少なくできないか」と尋ねると、店主と思しき人物から「できません」と一刀両断されてしまった。
ほどなくして、筆者には「拷問」としか思えない分量の特大醤油ラーメンが運ばれてきた。「どうやって平らげるか」と思案しながらコショウを目で探していると、横にいたラーメン通の友人が小声で、
「スープ本来の味を台無しにしてしまうため、あえてコショウは置いていない」
仕方なくそのまま食べ始めた時、店内に漂う妙な雰囲気を感じた。カウンターを埋め尽くしていた客の誰もが、全く言葉を発していないのだ。
不思議に思いながらふと見上げると、あろうことか、壁には「私語禁止」の大きな貼り紙が。刑務所の食堂でもあるまいし、店側が客に私語を禁じるとは、いったいどういう了見なのか。
しかし店主と思しき人物は悪びれるどころか、「食わせてやっている」と言わんばかりの上から目線で、居並ぶ客を睥睨していたのである。
確かにラーメンの味は旨かったが、このゴーマンぶりには腹が立った。はたせるかな、それから1年後、この超人気店は呆気なく閉店に追い込まれている。
最近は「注文の確認に支障を来たす」との理由で、スマホの「イヤホン禁止」を求める店もあり、SNS上で批判の声が上がっているという。
たかがラーメン。筆者としては、私語禁止もイヤホン禁止も、真っ平御免である。
(石森巌)