フジテレビは昨年7月から休職・療養中だった渡邊渚アナウンサーが、8月31日で退社すると発表した。渡邊アナは同局を通じて「病気のためお休みしておりましたが、このたび、退社する決断を致しました」とコメント。休職前は「めざましテレビ」の月水金と隔日に出演、さらに「ぽかぽか」や「もしもツアーズ」などを担当した。慶應女子高校時代にバレーボール部員だったこともあり、同局のバレーボール取材も精力的にこなしていた。
渡邊アナの進退と関連しているのでは…と心配されるのが、パリ五輪をめぐる大炎上だ。渡邊アナはバレーボール好きを公言しており、療養中の今年1月の春高バレー観戦に続き、パリ五輪も観戦。春高バレーの際はバッシングなどされなかったが、パリ五輪男子バレボール日本×イタリア戦を観戦した様子がNHKの中継で映し出されたところ、渡辺アナのインスタグラムとYahoo!コメント欄は大炎上。別にフジテレビ局員でもなかろう匿名ネットユーザーから「同僚への配慮が足りない」などと、余計なお世話のコメントが大量に書き込まれたのだ。
ちなみにMeta社が運営するインスタグラムのアカウントは、同じMeta社が運営するFacebookの個人情報と連動している。渡邊アナに嫌がらせコメントを書き込んでいるのがどんな人物かと、Facebookのプロフィールを辿ってみると、見事に学歴不詳、中高年の「無職」が出てくる出てくる…。 自分の子供でもおかしくない20代の女性アナウンサーを誹謗中傷するヒマがあるなら「まず自分が働けよ」とツッコミたくなる。
渡邊アナ退職の報にも、誹謗中傷が目に余るYahoo!コメント欄。IT企業幹部が眉をひそめて苦言を呈する。
「Yahoo!のコアユーザーは団塊世代です。1990年代にWindows95でパソコンを使い始めて30年来、Yahoo!のポータルサイトを使ってきた人たちですが、特に最近のYahoo!コメント欄の『老害化』はあまりに酷い。子供や孫のような若い著名人をターゲットにした誹謗中傷は、目に余るものがありますね」
パリ五輪は観戦できても、アナウンサー職復帰へのハードルは高い。なにしろ体調悪化する前の渡邊アナは「めざましテレビ」担当の日は午前2時起床。8時までの生放送を終えると、今度は11時50分からの生放送「ぽかぽか」の進行、さらに午後は「めざまし」のグルメロケやスポーツ取材と続く。「笑顔」は作っていても、実際には睡眠時間と神経をゴリゴリ削られる体力勝負、肉体労働だ。
ちなみにパリ五輪中、日本代表選手を送り出した「大企業」は、社員が自腹で同僚アスリートの現地応援に行くことに寛容だった。筆者の知人には、マルセイユ・アリーナまでヨット競技を応援しに2週間の長期休業をとった「猛者」までいた。
「療養中に旅行に行くとはケシカラン」などと時代錯誤なことを言うのは今どきの企業風土を知らない無職か、ブラック企業の管理職…などと察するものがある。勤務先と主治医が許可を出しているのなら、療養中にどんな生活を送ろうが本人の自由であり、第三者がとやかく言える立場にない。
療養中の渡邊アナが病身を押して名誉毀損の訴訟を起こしたところで「骨折り損」で終わりそうでもある。インスタとFacebookの経歴を見る限り、卑劣なネットユーザーを名誉毀損で訴えたところで、数十万円の賠償金を支払えるだけの経済力は見込めそうにないからだ。
渡邊アナの退職は実に残念であり、同時に局アナ個人が誹謗中傷に対抗するのは難しい。テレビ局員、特にネットユーザーからのバッシングに遭いやすいアナウンサーを守るために、テレビ局の法務部門があるのではないのだろうか…。
(那須優子)