芸能

養護施設の子供たちに「両親の愛と故郷」を歌わせた「募金パクリ24時間テレビ」の残酷な演出

 児童養護施設で育った子供たちは、テレビ局のオモチャなのか…。

 台風10号が接近する中、SNSやネット掲示板で強行開催が懸念されていた日本テレビの「24時間テレビ」は、番組冒頭から最後まで制作者サイドの「思考停止」をさらけ出した。

 視聴者を驚かせたのは、8月31日午後8時前。この日夕方、特番冒頭で今年のチャリティーマラソンは台風接近に伴い、ランナーのやす子が日産スタジアム内のトラックを周回するとの説明があり、その通り午後7時55分にやす子が粛々とトラックを走り始めた。

 するとニュースサイトのコメント欄やXなどのSNSには「日テレ、やばい」「イジメ」「そこまでしてマラソンする意味あるのか」などの書き込みが相次ぐ事態に。「#トラック250周」がトレンド入りした。

 番組では、やす子が高校生の頃に経済的事情で身を寄せていた児童養護施設での暮らしを紹介。やす子は自衛隊に入隊後、一度も訪れていない施設を訪問する際に「行きたいけど、行きたくない…」と複雑な心境を吐露していた。

 募金を集めるためだけに視聴者の同情を誘う強引な演出と進行に危うさを唱えるのは、児童精神科医だ。

「昨年、国が初めて発表した児童養護施設出身者の追跡調査では、自殺率が異常に高いことが明らかになりました。施設出身者こそ、生活自立のために国家資格や技術などの『手に職』をつけなければならないのに、就業支援の手が差し伸べられていないのです。施設出身者の4年制大学、短期大学、専門学校を含めた進学率はわずか10%台。施設を出た途端、生活に行き詰まって犯罪に手を染めるか、精神を病むか、自傷行為に及ぶこともある。特に親の愛情を知らない子供は『自己否定感』と『疎外感』が強く、あるNPO法人のアンケートでは、施設入所中の子供の9割が『一度は自死を考えたことがある』と回答しました。今は気丈に振る舞っている人でも10年後、20年後に何かの拍子に『自己否定感』がフラッシュバックすることがあります」

 やす子は番組で取り上げずとも、子供達にとって憧れの「成功者」だ。ところが、そのやす子自身の気持ちの整理がついておらず、足を負傷してもなお雨天を走らせる「恩返し」を強要させる番組進行は、当事者からすれば「施設を出て成功しても、施設出身者という負い目から一生、逃げられない」という絶望感しか生まないだろう。

 さらに激走を続けるやす子に伴走するかのように、女性ネットユーザーからは次のような批判が相次いだ。

「やす子にスポーツブラを装着させないの、信じられない」「スポーツブラをつけないと胸の靭帯が切れる」「プロのコーチのくせにランナー用の下着も準備してないのか」

 やす子の揺れる胸元が刺激的すぎたのか、とうとうゴール地点の両国国技館手前の沿道で、中高年男性がやす子の胸をつかもうとする「強制わいせつ未遂」まで、全国ネットで生中継される事態に。

 そんな「24時間テレビ」の思考停止、限界が露呈したのが、バカのひとつ覚えの大円団だった。やす子のゴール後、毎年恒例の「サライ」の大合唱が始まったが、この「サライ」という歌はご存知の通り、夢を抱いて故郷を捨てた人物が、親の愛と故郷を思い出す心情を谷村新司が歌い上げたものだ。

 つまり、日本テレビは視聴者に感動を押し付けるため、ワケあって親の愛も知らず、故郷もない過酷な運命を生きる子供や施設出身者に「サライ」の歌詞「若い日の父と母に包まれて過ぎた柔らかな日々の暮らしをなぞって生きる」と、残酷かつ無神経に歌わせていたのである。前出の児童精神科医はこうも言うのだ。

「家庭の事情で傷ついた子供たちに必要なのは同情や施しではなく、寄り添いと傾聴、困った時に助けを求められる環境、そして支援です」

 相手への寄り添いを欠く「24時間テレビ」の裏で繰り広げられていたパリパラリンピックでは、車椅子ラグビー日本代表が強豪オーストラリアを破って決勝進出。バドミントン男子シングルス(車いすWH2)の梶原大暉も決勝進出し、いずれも銀メダル以上が確定した。

 盲目のエース・木村敬一も競泳50メートル自由形でリオ大会以来、自身通算9個目の金メダルを獲得するなど、日本勢は海外大会史上最高の好成績を連日、更新している。

 ところが「障害者は弱者」「施設出身者は弱者」という偏見で同情と募金を集め、その一部を横領する系列テレビ局員までいた日本テレビにとって、「障害者が地球を救う」「障害者が活躍する」のはよほど都合が悪いのだろう。

 今回もまたパリパラリンピック競技の放送は「24時間テレビ」のタイムテーブルに盛り込まれることはなかった。

(那須優子)

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