血統や馬齢、ローテーションや枠順など、レース前になると注目レースの「傾向と対策」がネット上などに散布される。
では、どれを信じて馬券戦略に生かせばいいのか。ファンを悩ませるのはいつもそれだ。なぜなら、データでは要らないと読んだ馬があっさり好走してしまうことが多々あるから。また逆もしかりだが「圧倒的に数値が不利に出ていないデータは、あまり鵜呑みにしてはダメ」と語るのは、関東在住の馬券師ライターT氏だ。氏いわく、
「4歳馬が30%は3着以内に来る、6歳以上は18%…だから後者は軽視しましょう。そんなデータは押さえ馬券の取捨ぐらいにしか使えない。15%も来たら普通に馬券になってしまう。パーセンテージで言えば一ケタなら参考になるし、本命馬をそこからは選ばないという戦略が成り立つ。中途半端な数値のデータはあまり頼りにしない方がいいでしょう」
確かに16頭立てで1ケタの確率でしか来ないデータ該当馬が6頭出走している場合、全馬が馬券に絡まない確率は高い。ところが、15%の確率なら1頭は来てしまう計算になる。そうなるとバッサリ切るのは不可能で、馬券点数が無駄に増えて混迷を極めるだけだ。
秋競馬スタートの今週末、9月8日に中山競馬場で行われる「京成杯オータムハンデ」(芝1600メートル)は、そんな〝信じていい〟データで馬券が絞れるレースだと前出のT氏が意気込む。
「まず7歳以上は要らない。過去10年で馬券に絡んだのは30頭中1頭のみ。秋競馬で若い馬が始動する中、過去の実績だけでハンデの重い〝年寄り〟は好走できないという傾向がモロに出ている」
とはいえ、ここで絞れるのは今回は2頭のみだ。人気馬を含む残り14頭をどう取捨していけばいいのか。
「まずは、8月に新潟で行われた同距離の『関屋記念』からの馬。今回は4頭で、サンライズロナウド、ディオ、ディスペランツァの牡馬3頭は上位人気でしょう。ですが過去5年、関屋記念から出走した馬は19頭で、馬券になった馬は4年前と5年前に1頭ずつの計2頭。どちらも夏に強い牝馬だった。他は関屋記念で掲示板(5着以内)に載ったような人気馬がことごとく消えている。同じマイル戦だが似て非なるもの。左回り平坦コースから右回り直線急坂コースに変わって、成績がリンクしていないということです」(前出・T氏)
これで人気の一角がバッサリ切られたことになる。では、やはり本命は穴馬からと思いきや、T氏は1番人気確実の3歳牝馬アスコリピチェーノを挙げたのだ。
「逆らえないものには逆らわない。ただし、京成杯AHは3歳馬が無双できるレースではない。好走できるのは、春の3歳GⅠで好走歴のある馬のみというのが圧倒的な傾向として出ている。これは信じていい。となると、今回5頭出走する中ではNHKマイルC2着のアスコリピチェーノが唯一の該当馬で、逆に人気のオーキッドロマンス、コラソンビートが消せることになる」
しかし、ここまで上位人気馬をバッサバッサと切っていいのだろうか…。一抹の不安を覚えていると、T氏は高笑いだ。
「京成杯AHのもう1つの肝は『人気を下から見ること』。実は毎年、出走馬の真ん中以下の人気薄が必ず馬券になっている。今回なら9番人気以下が確実に1頭は来るということを意味する。これは偶然ではなく、実力差がさほどない馬たちがこぞって出走しているという裏返しと考えていい。ただし、この穴馬を見つけるには上位人気をバッサリ切っていく必要がある。エエヤンは買いだが下位人気ではない。とすると、関屋記念組をあざ笑うかのようによく穴を出す中京記念組、今回唯一出走のセルバーグに激走の匂いがプンプンする」
ルメール騎手騎乗のアスコリピチェーノのアタマ固定で、9番人気以下との組み合わせで3連単勝負。これがどうやら〝信じられる〟京成杯AHのデータ戦略といえそうだ。
(宮村仁)