2軍に置かれたままの中日ダヤン・ビシエドの退団がほぼ決定的となる中、立浪和義監督の就任直後のインタビューが、再びクローズアップされている。
中日は2019年から3年契約で与田剛監督を招聘。1年目は5位、2年目には3位に入り8年ぶりのAクラスとなったが、3年目は優勝争いに加わることができず、再びBクラスへ。立浪監督は与田監督の退任を受け、チームを引き継ぐことになった。その就任会見では、次のように語っている。
「強いチームを作る、そして勝つ野球をする、そのためには妥協はしません。皆さんの期待に応えられるよう全力で、監督として頑張っていく決意です、どうかよろしくお願いいたします」
生え抜きスター監督の力強い言葉に、多くのファンが期待に胸を膨らませたのだった。そしてこの時、優勝に向けての「キーマン」に挙げたのが、ビシエドだった。
「僕は歴代の助っ人外国人の中で、能力はビシエドが一番だと思っている」
ところがここで、
「プロが100人いれば、100人が『間違ってる』という打ち方をしている」
そう言って、ビシエドの打撃フォームを真っ向から否定したのだ。その上で、こう断言したのである。
「正しい打ち方を覚えれば、軽く40本は打つと思う。イメージしてるのはタイロン・ウッズ」
2006年に本塁打と打点の二冠王に輝き、中日のセ・リーグ優勝に大きく貢献したレジェンド助っ人の名前を引き合いに出したのだった。
当時のビシエドは33歳で、すでにメジャーで実績を残し、日本球界でも首位打者と最多安打のタイトルを獲得しているバリバリの一流選手。そのビシエドに「頭から突っ込むんじゃなくて、ウッズのように重心を後ろに残したまま振れ」と言い放ったのだから、ファンはア然とするしかなかった。
そもそもビシエドは中距離打者タイプで、長距離砲のウッズとはフォームが異なるのは当然。結局、ビシエドは立浪監督の要求に応えることができず、気が付けば2軍に幽閉される時間を積み重ねるばかりだった。
ビシエドの打撃を「間違い」と断罪して自らの理論を押し付けたが、かの名将・野村克也監督は「教える指導者はダメな指導者。100人いれば100通りのやり方があるのだから、教えるのではなく自分で気付かせるのが仕事」という名言を残している。
ファンは決して立浪監督の「迷言」を忘れることはないだろう。
(ケン高田)